79.苦労したわりに評判がイマイチ(2)

「いいから料理作れ。腹減った」


 出所は教えてくれないらしい。不機嫌そうにタバコをふかして偉そうに命令されたが、フライパン(仮)を用意した恩人なので許してやろう。上から目線でにやりと笑う。


 出来上がったハンバーガーを食べて、驚くがいいぞ!! ジャンクフードの王様だ! ポテトは用意できないが、まあいい。


 鉄板を熱する間に、材料の中から卵を探した。リストにある数は50で、人数を数えると48、49……あれ、5つほど足りない。とりあえず机の上に卵を出した。


「卵、足りないかも」


 ここで軍隊なら、新人は卵なしになる。でもここは傭兵部隊で、もちろん新人はいるんだが……正直オレが一番の新人だと思う。唸っていると、ブラウが顔をのぞかせた。


 いくらオレの影が出入口でも、股の間から顔を出すのはやめてくれ……マジで。


『主ぃ、卵あるよぉ』


「は? 猫って卵産めるの?」


『……いくら温厚な僕でも怒るよ』


「いつから温厚かは置いとくとして、卵を出せ」


 ぶつぶつ文句を言いながら、ブラウが取り出したのは卵だった。白い鶏卵サイズだが、中身の生物は何だろう。ちょっと気味が悪い。


『主、僕はこっちの卵で』


 ブラウは自分が持ってきた卵じゃない方を指さした。よし、コイツの飯は持参した得体のしれない卵に決定だ。にやりと笑って卵を受け取る。危険かもしれない卵は聖獣と腹の丈夫そうな連中に回そう。


 半数ほどの傭兵達が起きてきた。料理の出来る奴に野菜を切らせ、パンを炙らせる。その間に手早く鉄板の上にハンバーグinオカラを並べた。焼ける匂いに釣られて、数人が手伝いを申し出てくれる。


「両面焼いて火が通ったら、こっちのパンの上に乗せて」


 引っ張ってきたテーブルに炙ったパンを並べて示せば、彼らは素直に頷く。一応、つまみ食い防止のために監督役を用意した。


「ヒジリ、つまみ食いする奴がいたら食ってよし!」


『主殿、我はそこまで悪食あくじきではないぞ』


 なにやら文句をたれているが、ちゃんとお座りして監視を始めるあたり、ヒジリは本当に真面目だ。ブラウに爪の垢を煎じて飲ませたい。朝日が当たる場所で体温を調整するコウコと並んで、ブラウは腹を温めていた。


 猫は変温動物じゃないはずだが。まあ、猫が働くと思わないのが正しいのか。これはどちらの世界も共通らしい。


「なあ、料理が得意な奴って何属性?」


 ふと気になった。この世界の人間は10種類の属性に分けられる。なぜか希少種のはずの竜が周囲にたくさんいるが、支配階級が多いのだ。つまり、他の属性の特性はあまり理解できていない。治癒が得意な鳥属性があるなら、料理が得意な属性もいるんじゃないか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る