223.東の国へ大急ぎで突入!(3)

 騒がしい昼食が終わると、それぞれに傭兵達が武器の手入れを始めた。昨日はまだ戦いの予定がなかったけど、明日になれば移動すると踏んだんだろう。確かにそろそろ東の国に行かないと滅びる。今は王族がいないから、契約者が不在の聖獣は国を守らない。いつ消えてもおかしくなかった。


 この辺のルールは、もう一度確認しないといけない。間違って覚えてて滅びた後に慌てても遅い……ん? オレが東の国に行くだろ。国境を跨ぐと、今度は南の国に聖獣の契約者がいない。数日で戻らないと南の国が危ないじゃん。


 あれれ? 早く契約者見つけないと、それぞれの国が滅びる! 国境に住んで、毎日行ったり来たりしないといけなくなっちゃう!!


「あのさ。契約者なしで国を保持する方法ないの?」


 食べ終えて髭の手入れを始めたヒジリが、驚いたような顔をした。ブラウは毛繕いを簡単に終える。ころんと転がって腹を撫でろと要求されたが、ヒジリに食い込むほど踏まれた。


『ぐああ、中身出るから』


『うるさい』


 踏んだくせに、ヒジリは容赦ないな。遊んでないでオレの質問に答えてくれ。足元で小さな手を水で洗うスノーが首をかしげた。


『簡単です。私と契約すればいいじゃないですか』


「誰が?」


『主様です』


 当たり前のように言われて、空を仰ぐ。考えるオレの顔に降り注ぐ木漏れ日が気持ちいい……じゃなくて。


「オレとスノーって契約してるのに」


 すでに聖獣と主人で契約済みなのに、奇妙なことを言い出したぞ。そんな顔で首を傾げれば、ブラウを蹴飛ばしたヒジリが話を整理してくれた。


『主殿は聖獣の主人だが、王族とは別に契約が存在しておろう。それを新たに結べばよい』


 主人の契約と国の守護契約は別口ってわけか。聖獣に主人がいない時期もあるし、王族の契約は常に存在してる。


「聖獣様と王族の契約では聖獣様が主で、王族が従……キヨ様の契約と主従が逆ですぞ」


 ベルナルドが丁寧に髭を拭きながら口を挟む。オレは聖獣の主人で、その聖獣にとって王族は従者に当たるのか。つまり土地の管理人である王族を選ぶのが地主の聖獣だった。


「あれ? だったらオレが命じれば、聖獣は国を維持できる……よね??」


『おそらく』


 マロンは考え込みながら呟く。他の聖獣も唸ったり頭を抱えている様子から、そんなこと想定したこともなかったんだろう。


「試してみようか」


 マロンに命じて、南の国が維持できれば……次の王族はマロン自身の意思で見つければいい。ぽんと手を叩いて頷いた時、駆け込んだレイルに首根っこを掴まれた。


「何のんびりしてる!? 東の国が消滅するぞ」


 そのまま強引に担がれ、オレは……信頼している情報屋であり従兄弟となった男に拉致された。

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