242.突撃したら帰る!(2)
綺麗に2班に分かれた男達を引き連れ、手分けして動く算段を整える。連絡用の魔道具は全員に行き渡らないため、班長などが持つことになった。が、じっと眺めていたオレはマロンを手招く。
「なあ、複製できそうな気がしないか?」
『やってみますか?』
「うん、イメージしてみる」
材料は等価交換に近い原則があるので、屋敷から不要な金属を集めてもらった。獣人も張り切ってくれて、雨樋をひっぺがしてくる。この建物、次に雨降ったら散々だな。オレの屋敷じゃないからいいけど。
大量の金属に手をかざして、右手に持つ魔道具そっくりの複製をイメージする。あれだ、コピペ。右クリックして、ポチッとな。唸りながら呟いた言葉が、呪文だと思ったらしく、騎士がメモしていた。
絶対に役に立たないと思うけど。
「これはっ! キヨ、もっと作りなさい」
「疲れるんだぞ」
抗議しながらも全員分作った。仕組み? そんなん知らん。お前ら、画面でコピペするときの仕組みなんて理解してるか? コピー機の仕組みは? それと一緒だ。ボタンを押せば出来る! オレが理解してるのは、その程度だった。そして結果を強く意識すれば、意外と魔法は細かいこと気にしない、いい奴だ。
そこへ着替え終えた獣人女性が出てきた。それぞれに好きな服を纏ったらしく、まとまりのない状態だが構わない。選べることがすでに嬉しかったらしい。石鹸もちゃんと使ったので、香りがいいし髪もしっとりしていた。
風邪ひかないよう、さっと温風で乾かす。それから男性陣に石鹸渡して風呂へ行くよう告げた。女性に比べたら、男の風呂は行水の速さのはず。
「レイルは奴隷の保護、シフェルはレイルから買った情報を元に奴隷の解放。オレは王城を占拠してくるわ」
「まだ残存兵力がある可能性も」
「組織立った抵抗されると面倒だぞ」
シフェルとレイルの忠告はもっともだ。頷いたオレはアーサー爺さんを指さした。
「オレが率いる傭兵が負ける相手じゃないさ。それにいざとなれば、爺さんを人質に押し通る」
「ほっほっほ、この老ぼれでは人質の価値がないかも知れんが、何とかしよう」
どこぞの隠居のご老公みたい。さすがにブラウも、ここは抑えてなかったのか。出てこなかった。
「気をつけてください」
資料に目を通しながら、シフェルは忙しく騎士の編成を行なって出立した。見送りながら、レイルに奴隷達を頼む。
「風呂の中の奴らに声かけておくか」
「問題ないだろ。早く行ってこい」
ぽんとケツを叩かれ、オレはジークムンド達を連れて街へ飛び出した。ヒジリが追いつき、袖を咥えて引っ張る。ちらりと視線を送れば、期待の眼差しでマロンが走っていた。馬の姿で……。
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