242.突撃したら帰る!(3)
「マロン、馬に乗ると他の連中が大変だから。よいしょっと」
掛け声をかけてヒジリの背に飛び乗る。それからマロンへ手を伸ばした。
「オレの前に乗れ」
少年姿に変化したマロンも乗せ、ヒジリが走る。隣を馬に乗ったベルナルドだが、コウコが巻きついていた。アーサー爺さんを後ろに乗せている。
傭兵達の足に合わせて走り、ある程度の大きさの広場で止まった。王都へ向かう魔法陣がある。魔力を流さないと模様が刻まれた広場に過ぎないが、これは使える。
「全員乗って! ワープするぞ」
「「「ワープって?」」」
「えっと、転移!」
通じないのか、ワープ。意味としては転移より短縮の方が近い気もするけど、翻訳されなかった。全員が乗ったのを確認し、魔力を放出する。通常は複数の魔術師が集まって起動する魔法陣だが、一気に魔力が走った。満ちて光る魔法陣が発動し、オレ達は王城の目の前にある噴水……の脇に落ちた。
「ってぇ」
「壊れてんじゃねえのか?」
「おい、おれを踏んでんの誰だ!」
騒ぎが大きい。だがさすがは戦闘のプロ、すぐに班ごとに集まって点呼を始めた。手足を含め誰も欠けていないことを確認した後、一斉に武器を取り出す。得意な武器を使うので、鞭から始まって長剣、短剣、銃に至るまで様々だ。
「おっと、爆弾は禁止だ」
ヴィリから爆弾を取り上げる。こいつはすぐに爆破しようとしやがる。舌打ちして収納へ放り込んだ。見上げる先の王城は、門を閉ざしていた。確か、すでに貴族は敗走した後だ。
「中に騎士や兵士が残っているかも知れない。攻撃する素振りがあれば、遠慮なくやれ!」
ここは他国で、流儀も違う。オレは見知らぬ人を助けて死ぬ気はないし、仲間にも生き残って欲しい。話したこともない奴らに殺されるジャック達を見たくなかった。だから容赦なく攻撃し、躊躇しないよう命じる。全責任はオレに押し付ければいいだろ。それが指揮官の役目なんだから。
「「「おう」」」
拳を突き上げた傭兵達は、散り散りになった。壁を越える者、城門脇の通用門を開ける者、開く城門の前で待つ者。ばらばらの行動だが、全員に共通するのは無駄のない動きだった。
オレは浮遊するヒジリのお陰で空を駆けて、城門の内側に飛び込んだ。すでに門を越えた数人が閂を抜こうとしている。手助けは不要と見て、窓から城へ入り込んだ。
しんとした廊下……人がいない建物って寒い。冬だから余計か。猫科の猛獣である黒豹の足音は響かない。爪を立てずに歩くヒジリの背から、様子を窺った。敵が出たら対応できるように。
そして……大きな広間まで進むが、誰もいなかった。
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