169.使えるなら先に言ってよ(2)
「残りは5人。まずオレが飛び出すから、そこを撃ってきた奴らを順番に……」
万能結界を最大限活かす方法を提案すると、さすがに眉をひそめられた。
「ボス、あんた頭がいいのに、時々バカだな」
褒めて貶すなんて、高等技術じゃねえか。ジークムンドをじろりと睨むと、反対側から盛大な溜め息をつかれた。
「おれは反対だ」
オカンであるノアが反対するのはいつものこと。さらりと聞き流す。そんなやり取りに、足元の影がぶわりと膨らんだ。
『主殿、我は思うのだが』
「何? ヒジリ」
黒豹は金瞳を瞬かせて、砦を見てからオレに視線を戻した。
『砦の中に我らを放てば終わりではないか?』
「うん?」
奇妙な作戦が聞こえたけど、空耳か? そんな聞き返し方に、ヒジリの足元から顔を覗かせる青猫がひとつ欠伸をして参戦した。
『僕らが片付けたら、一瞬じゃん』
「え? そういう俗なことを聖獣に頼んでいいの?」
『声がかからないゆえ、おかしいと思ったが……主殿は主従関係を理解しておられなかったか』
ヒジリが呆れたと呟く。その響きをじっくり検証した結果、オレと聖獣達の意識に大きな溝があったと判明した。聖獣同士の戦い以外で彼らをあまり使っちゃいけないと考えてたけど、いいんだ? 便利な手足として使っても問題ないの?!
それってオレがめちゃくちゃチートじゃん。世界の守護神みたいな……神聖なイメージは不要でしたか。それじゃあ遠慮なく使用させていただきましょう。
「いや、そういう重要なことは先に言ってくれないと」
『普通は聖獣と契約すれば、使おうとするのが人ではないのか?』
「……オレが人じゃないみたいに言うなよ」
異世界人だけど、一応人の括りに入ってるから。文句を言いながら、彼らを使えるなら作戦の幅が広がるし、被害も少なくできると気づいた。
『主殿だからな』
『主だもんね』
『そうよ、だから言ったじゃない』
『本当に気づいてなかったのですか?』
ヒジリとブラウに続き、コウコとスノーも参戦して聖獣4匹でディスられた。お前らが表に出てきてあれこれ言うから、ジークムンドが苦しそうに笑いを堪えてるじゃないか。ジャックなんか遠慮なく笑ってるが、息が詰まって声が出てない。器用な奴らだ。
シャツの袖で滲んだ汗をぬぐい、作戦を変更する。頭の中で組み立てた通りなら、ほぼ被害ゼロで行けるぞ。
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