11.拘束状態での拝謁(2)

 じゃら……鎖の音が冷たく響く。状況がよく理解できていないが、とりあえず大量の装飾品を身体中に取り付けられた。そう、ほとんど拘束具と変わらない。


 宝石や金銀を使った拘束具――そう判断した理由は、つけるたびに封じられていく魔力が原因だった。確実にオレが暴走出来ないよう手を打ったらしい。


 膨大な魔力があるから、それを装飾品で封じて使えなくしたら『火薬を抜いた銃弾』空砲状態になると考えたのだろう。つまり、危険物扱い。


 シフェルあたりの諫言か。


 ネックレスとかいう首輪を付けられ、手首にも変な記号が刻まれたリボンを巻かれた。指輪が両手にひとつずつ、白金の髪は撫で付けてから余った部分を後ろで括られる。髪飾りと称してかんざしのような物が差し込まれた。


 重い……。


 付けられた飾りも重いが、何より身体が重い。ひどく怠いのは、魔力を無理やり抑え込まれる影響だ。最後に当然とばかりピアスを刺そうとして……侍女の手が止まった。


「あら、ピアス穴は開けていないのですね」


 言われて気付く。前の世界でも開けていなかったから、ピアスはつけられない。不思議そうな侍女の態度から思い出してみれば、ジャックやレイルを含め、シフェル、クリスも全員がピアスをしていた。たぶん……。


 目の前の侍女さんもしっかりピアス装着済み。彼女の態度を見るに、どうやらこの世界では男女関わらず普通にピアスはつけるらしい。


「ピアスするのか?」


 これ以上の拘束具が必要か? そう告げたつもりだが、侍女は別の意味に取ったようだ。謁見用のマントを確認していたシフェルへ声をかけた。


「シフェル様、いかがいたしましょう?」


「ああ、私が」


 私が……? どうするのか。


 シフェルに様をつける違和感に口元を緩めていると、歩み寄ったシフェルがひょいっとオレを抱き上げた。じたばた暴れても足が付かない。


 く……屈辱だ!


「離せっ!!」


「暴れないでください。落としますよ」


 ジャックより15cmほど身長が高いシフェルが意地悪い笑みを浮かべる。落ちるじゃなくて、落とすって言ったか、こいつ。笑顔の裏で、本当に性格悪い。


「落とせっ!!」


「嫌です」


 きっぱり笑顔で切り捨てられ、子供の手足では敵わないまま椅子に座らされる。足が付かない高さなので、ぶらぶら足を揺らして顔を顰めた。

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