130.赤毛の情報屋が、嘘だろ?(2)
北の王太子であるシンの民族衣装である漢服みたいな格好とよく似た、ゆったりした服を纏うレイルにぽんと手を叩く。なるほど! 気やすい彼らの様子から、風貌が似ていると感じた理由を察した。もしかして親戚、とか?
「親戚?」
お行儀悪いが、義兄と友人を交互に指でさす。隣で「こら」とリアムが指先を掴んで下ろさせた。同じ地位にあるとはいえ、王太子は王族の中でもトップクラスの階級だ。失礼に当たるのだが……当人たちは大して気にしていなかった。その証拠にシンは苦笑いし、怒った様子なく肩を竦める。
「従兄弟だ」
いとこ……つまり、レイルの親は北の王族だった? あれ? 孤児で傭兵になって、途中で情報屋に――いや、そこじゃない。シンとレイルが従兄弟なら、オレも従兄弟じゃん? 義理だけど。
「え? ええええええ!?」
リアムの下した指でもう一度彼らを指差した。
「くくっ、お前のそういうとこ、嫌いじゃないぞ」
「好きなくせに」
憎まれ口よろしく反射的に言い返してしまった。レイルの口調はいつも通りで、王族だった過去なんて感じさせない。その気安さが、ついオレの口を軽くした。
「そうだな。お前のことは気に入ってる」
締め括るように肯定されると、今度は何も言えなくなった。口を噤んだオレに、シンは「後で教えてやる」と約束する。頷いた時点で、レイルの過去については後回しとなった。
「今回の騒動で、宮廷内の膿をかなり出すことができました。お礼を言います、
「え、普通に呼べよ。今さらになって肩書変わったら「殿」とか付けられても、違和感しかない」
「……あなたらしいですね、キヨ」
突然口調や敬称をつけられても、気味が悪い。呼び捨てだったケンカ友達に「キヨヒト君」とか呼ばれたら、顔面グーパンだから。シフェルは納得したのか、いつもの呼び方に直してくれた。公的な場では仕方ないが、今後も同じように呼んで欲しい。
「膿をかなり……ってことは、まだ残ってる?」
「ええ、今回動かなかった勢力があります」
厄介だな。様子見をしたのか、何か察知して身を伏せたのか。前者なら何か手を打てば引っかけられるが、後者のタイプだと排除に時間がかかりそうだ。
「その勢力って、どのくらいの規模?」
「人数は少ないのですが、面倒くさい事情がありまして……」
ちらりとシン達を見て濁された。どうやら他国の人間がいる場所では言えない話のようだ。この辺はいわゆる大人の事情なので、オレもさらりと流した。
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