41.傭兵だからこその戦い方(3)
本当に、何を言いたいのか。眉をひそめたところで、笑いながらジャックが仲裁に入った。
「こういう非常識な奴だ。心配するな。護衛はおれらのグループが残る」
当然のようにノアとライアン、サシャが頷いた。
え、なに? 追い込む先にオレがいるから心配してくれてたのか。傭兵って気のいい奴ばっかりだな……顔は怖いしゴツイけど。
これが街中なら、見た目がいい子供を誘拐する集団にしか見えない光景だ。しかし彼らはオレを心配してくれる優しい仲間だった。
ちょっと感動してしまう。だって前世界でオレはぼっち手前だったから。サバゲーでチーム組んだ連中も、こんな風に心配してくれたことなかった。家族からも孤立してたオレにとって、仲間と呼べる存在は本当に嬉しい。
「皆、怪我しないように動いてくれ。無理なら離脱していいから」
「「「任せろ」」」
口々に了承を伝える彼らを見送った。残っていたヴィリはダイナマイトを眺めてニヤニヤしている。爆弾魔って感じで怖い。
「ヴィリ、それは使わないぞ」
仲間を巻き込むだろ。そう告げると残念そうにリュックに放り込んだ。ヤバイ奴だ、きちんと監視しないと『尊い犠牲だった』なんて言葉で味方も吹き飛ばすタイプっぽい。口調が礼儀正しい奴ほど、ヤバイ性格した奴が多い気がするぞ。
「そろそろか」
ジャックが呟いて銃を抜く。ノアも迎撃の態勢を整えた。さっさと近くの木に上ったライアンは狙撃銃を構え、サシャは大きな半月刀を取り出す。オレもレイルに貰ったナイフを確認してから、銃に弾を込めた。
静まり返っていた森に、突如大きな怒号が響き渡る。どうやら攻撃が始まったらしい。予想外の方角から奇襲された連中は、こっちへ追い込まれていた。
「結界張っとくか」
銃弾が当たると抉らなくてはならないため、パラボラアンテナをイメージして半月形の結界を張る。大きめに作ったので、近くにいるジャック達も内側に取り込むことが出来た。直径7m前後だ。
「なんだ、この魔力…」
「オレの結界」
この形ならば弾を弾き返せるし、金属製の硬いアンテナをイメージしたから簡単に貫かれることもない。そもそも強度は魔力量によって決まるらしいから、オレより魔力量が多い奴がいない戦場で負けるはずがなかった。
「……キヨ、こっちからも攻撃できないぞ」
「え?」
言われて気付く。確かに敵の攻撃を防ぐ意味で有効だが、こちらの攻撃も弾かれるんじゃないか? つまり、銃を撃つと跳ね返って自分に当たる……と。立派な自爆攻撃だった。しかも敵より自分の方が魔力多い分だけ、被害が大きいかも。
「しっかりしてくれ。ボスなんだから」
呆れ顔のサシャに呟かれ、ノアも複雑そうな表情で頷く。気配を消しているライアンの視線も感じる気がして、ちょっと肩を落とした。いい作戦だと思ったのにな。
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