65.捕虜にメシ抜きはないわ~(2)
「オレがいた世界だと『自分がされて嫌なことは(相手に)するな』って考え方があるわけ。戦って疲れてる状態で囚われてメシ抜きは、皆だって嫌だろ? だったらメシ食わせてやろうよ。この考えが戦場で統一されれば、自分が捕まったときもご飯もらえるじゃん」
甘いのだと、自覚はあった。所詮は戦争がない平和な国から来た人間の考えだ。命がけで生き抜いてきた彼らにとって、砂糖菓子みたいな幸せな頭をしてると思われるレベルかも。
じっと反応を待てば、苦笑いしたライアンが立ち上がって肩を叩く。サシャはオレの髪をくしゃりと乱してから、頭をなでた。どちらも無言で行うから、子供を
「……子供扱いして」
ぷくっと頬を膨らませて不満を表明すると、ジャックが首を横に振った。
「違うな。逆だ。お前の考え方に納得した証拠だぞ」
「キヨがおれたちのボスだ。キヨが決めたなら従うさ」
ノアが格好いいセリフで締めくくる。
やだ、涙腺緩くなりそう……うちの傭兵さんは皆イケメンすぎるぞ。
「おいおい。そんなんでいいのかよ」
恐れられる二つ名持ちだろうと指摘するレイルだが、止めようとはしない。試すような言い方はレイルの特徴だが、お代わりを手に後ろで話を聞いていたジークムンドが事も無げに返した。
「構わんさ。2連戦してほぼ損傷なしで切り抜けたのはボスの手柄、もし捕虜に甘い態度をとって逃げられたとしてもボスの手落ち。どっちもボスが責任とるんだからな」
無責任な言い方だが、捕虜に食事を持っていくよう手配してくれる。ちょっと不満そうな顔をしながらも、従ってくれる傭兵に感謝だ。自分達のお代わりを確保した残りを、手際よく分配し始めた。
「毒殺する気か!?」
叫んだ捕虜の声に、肉入り白パンを咥えて近づいた。歩きながら食べちゃいけません、って習ったけど戦場だから大目に見て欲しい。騒いでいるのは降参の判断を下した男だった。
「食事を与える義務はないけど、与えるのは指揮官であるオレの自由。もらうのはそっちの自由なわけ。食べたくなければ、食べなければいいさ」
博愛精神に溢れた人間じゃないんだわ、オレ。そう突きつけて、パンの残りを放り込む。もぐもぐしながら眺めていると、北の兵隊の中でも若い連中は恐る恐る手を伸ばして、まだ湯気のたつスープを口にした。白パンが入った袋を手渡すと、塹壕の中できちんと分けている。
意外と礼儀正しい。さすがは正規兵の皆さんだ。一部の兵隊さんからは、お礼の言葉まで頂戴してしまった。焼肉は食べ終わってるので、スープとパンだけだ。
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