270.裁判開始、ざまぁしてやんぜ(4)
開始した裁判を、リアムの隣に座って観れるなんて。感激しながらも、反対隣に腰掛けたシンのお陰でデレデレしていられなかった。オレがリアムの方へ寄っていくと、引き戻そうとする。今日は中央の国の皇族として参加するオレが、北の民族衣装じゃなかったのも気に入らないみたい。
舞台上に罪人として並ぶのは、とろり蒟蒻とおなら公爵、あとペッコリ侯爵だ。全員の肩書きに「前」がつく。すでに爵位は親族や子弟に受け継がれた。貴族家というのは面倒なもので、勝手に潰せないらしい。親族ばっかりだからね。そのための政略結婚だろう。
裁判長は誰が務めるのかと思ったら、ちゃんと法律の専門家がいた。あの衣装……見覚えがある。菱形の黒い帽子と魔法使いのローブっぽいポンチョもどき。どこで見たんだったか。
『主、見て! あの服、卒業式のやつ』
「ああ、それで見覚えがあったんだ」
アメリカや欧米で、卒業式に博士号持ってる奴が着てるやつ。映画で観たと思う。頭の中で一致して、納得しながら「誰かあの時代の奴が送り込まれたんだな」と呟く。後は勘違いした日本人の可能性も……裁判官っぽいもん。ドキュメントとかで欧米の裁判官が似たような格好してた。
ブラウはあちらの世界を覗いているから、オレと物の価値観や目線が近い。問題はチャラいことだけだ。尻尾を大きく左右に振りながら、巨大青猫は貴賓室を我が物顔で占拠していた。
「ブラウ、邪魔」
『えええ! ヒジリだって大きいままじゃん』
「だから邪魔なの」
ヒジリは小型化しない。信条か別の理由があるとしても、別に強制する気はなかった。だが青猫は別だ。ブラウには大型でいる理由がないんだから。さっさと小さくなれ。広い部屋が狭く感じるんだよ。黒豹と巨大青猫に目を輝かせているリアムには悪いが、護衛も含めて、この部屋の人口密度高いぞ。
「嫌なら影に入れ」
『……主は僕に冷たいよね』
「冷たくされる理由、わかってる?」
『自覚してるよ』
全然反省してない声色で、青猫は小さくなった。さりげなくリアムの膝に乗ろうとして叩き落とされ、諦めてシンの膝に飛び乗る。おま……っ、節操なしめ。
「リアム、裁判の証言じゃなくて直接対決って出来る?」
じっとオレを見て、それから後ろのシフェルやウルスラの顔を確認する。彼らの許可が出たらしく、重々しく頷いた。
「絶対に負けられないのに」
淡々と進む裁判をそのままにして、見物していれば終わるぞ。そんなお誘いに、オレは笑って首を横に振った。
「絶対勝つから任せてよ、ね?」
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