220. 黒幕特定は任せた! オレは大切な用がある(3)
『主様、私も』
飛びついたスノーが肩にとまり、ぺたりと寄り添った。ありがとうよ、冷たくて気持ちいい。
「ここまで絞れれば、あとはシフェルにやらせりゃいい。オレは別の方向から探る」
何か気になることがあるのだろう。レイルはそれだけ言い残し、さっさと森に消えた。いつも思うけど、絶対に転移魔法陣とか持ち歩いてるぞ。あいつ……移動がやたら早いんだよ。
「それで、こいつは?」
二つ名持ちに囲まれて震える襲撃犯に、ジャックが顎をしゃくる。殺すのか引き渡すか、決まってるだろ。
「オレは約束を守る奴なの。シフェルの隊に引き渡してきて」
ブーイングが上がったが、そこは無視だ。オレはこれから大切な用事がある。
「ちょっと外すから、後よろしく」
よいしょとマロンを胸元に抱き上げる。コウコやスノーを乗せたまま歩き出すと、後ろからレイルとジャックの声が掛かった。
「おい、護衛は連れて行けよ」
「単独行動禁止だ」
「あ、うん。じゃあ……」
誰にしようかな。そんな迷いから言い淀んだオレに、ベルナルドが立候補した。反論しないで肩を竦めるのは、二つ名持ちばかり。戦闘において、ベルナルドの腕前は高く評価されてるからね。
「お供しますぞ」
「じゃあ、ベルナルドに頼むね」
足元を8の字に歩くブラウを、軽く蹴飛ばして邪魔だと告げる。左側に寄り添って歩くヒジリが、ぱくりとブラウの首を咥えた。ぶら下げられて歩く猫に苦笑いし、テントから離れた場所で足を止める。
「こちらでお待ちしておりますので」
そっと囁き、声は聞こえないが姿は見える位置で木に寄り掛かった。ベルナルドの気遣いに大きく頷いて手を振る。収納から取り出したシートを敷いて、その上にクッションをいくつも並べた。こそこそとお願いすれば、ヒジリがクッションと畳んだシートを運んで、ベルナルドに届ける。
戻ってきたヒジリに指を噛まれながら、丸くなった彼に寄りかかる。大量のクッションにスノーとコウコを下ろし、ブラウを足元に並べた。クッションに座ったオレの膝に、ぬいぐるみサイズのマロンを乗せる。
「約束通り話そうか」
困ったように目を逸らすマロンを、抱き上げてくるりと回した。オレに背中を預けるようにして座らせる。顔を見ない方が話しやすいだろ?
「話せることだけでいいよ。全部じゃなくても……命令はしないから」
自分で言葉や内容を選んでいい。そう告げると、もぞもぞしていたマロンの動きが止まった。恐る恐る振り返る様子に、くすくす笑いながら鬣を撫でてやる。すると安心したのか、マロンの強張った体から力が抜けた。
『僕は……前のご主人様に憎まれていたんです』
彼の過去語りは、衝撃の告白から始まった。
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