07.本性あらわる(5)

 世界に排除された竜は、繁殖力が低い。


 他の属性との間にほぼ子供が出来ることはなく、純血が守られてきた種族だった。それ故に大量に狩られた竜の絶対数が急激に増えることはない。ようやく国々が動き出し、竜の絶滅を防ぐ対策は取られているが、今もっとも滅びに近い属性だった。


 異世界人であり血筋など関係ない『キヨヒト』――彼は現存するどの竜より原種に近い、純粋な力を宿していた。その鮮やかな赤瞳がすべてを物語る。




「さて……どうしたものか」


 唸るレイルへ、伸ばしたままの手が再び揺れる。誘う動きに、また一歩だけ距離を詰めた。


 これ以上近づくと危険だと本能が告げる。自分より格上だと報せる本能に従い、レイルはゆっくり目を伏せた。


「どうした?」


 笑う声は子供らしさのない、ひどく乾いた音だった。



 カフスに触れて繋いだ通信から、状況はジャック達に伝わっているだろう。あと少し持ち堪えれば、彼らが駆けつけてくれる。そこで、レイルの仕事は終わりだった。


 だから危険を承知で、この場に留まるのだ。



 あとすこし…。


 早く、早く来い!



「……っ、待たせた」


 飛び込んだジャックが息を切らせて座り込む。よほど急いできたのだろう、その額から汗が滴っていた。普段は涼しい顔で戦場を駆ける男らしからぬ、焦った様子は珍しい。


「赤瞳の竜、なるほど……ジャックさんが私を呼ぶわけですね」


 厭味なほど丁寧な口調で、子供を見つめる青年は笑みを浮かべた。目の前で煉瓦を溶かしながら狂う竜を前に、平然と歩き出す。


「レイルさん、お待たせしました。交代します」


「任せた!」




 珍しいブロンズ色の髪が熱風に揺れる。新緑の瞳をまっすぐに子供とあわせ、レイルの隣に並んだ。ほぼ同時に叫んだレイルが後ろへ退く。


 正直、熱も恐怖も限界だった。


「……シフェルか、よく見つかったな」


 一息ついて手を差し出せば、息を切らせていたジャックが水筒を渡す。汗に湿った髪が乾いていくのを感じながらジャックが髪を掻き上げた。


 飄々とした姿ばかり見せる『赤い悪魔』が、飲み干した水筒を放って地面に崩れるように座る。


「あとは、アイツに任せよう」

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