30.増える魔力と罰ゲーム(2)
2人の話に、オレは首をかしげる。あれ? 魔力は聖獣がオレに注いだ分だけだよな? 異世界に落ちたときに注がれた分だけなら、なんで増えるんだろう。もって生まれた能力を伸ばすのと違うはずだ。
「――魔力って増えるの?」
「「『は?』」」
今、1人増えた? かしげた首をさらに傾けると、足元から目を丸くしたヒジリが覗いているのに気付いた。ああそうか、頭が
『主殿、おかしなことを……』
「セイは常識を知らないから」
「そうですね。我々の常識が通用しない人ですから」
たいがいに失礼な連中だ。オレが非常識みたいな言い方しやがって。かしげるのをやめて、クッションの上に真っ直ぐ顎を乗せる。リアムの手が離れると、あのひんやりした感覚が消えた。
「魔力制御のときに説明したであろう。人は生まれたときに与えられた魔力量は固定されるが、使う魔力や能力によって変動するのだ。セイの場合は聖獣殿と契約したことで倍近くまで魔力量が増えるだろう」
「……そんなに要らない」
嫌な予感がするんですけど? オレが知る数少ないラノベの勇者は異世界召還されて、訓練や冒険でどんどん魔力量を増やしたんだよ。そしたらさ、魔王復活の鍵とかで死に物狂いで戦うはめに………あらやだ、フラグなんかじゃないぞ。
「セイは贅沢だ。竜属性だから魔力が多いので不便しないが、犬や猫属性の中には生活に使う収納魔法にすら足りない者がおるのだ。そのような贅沢を口にしては怨まれるぞ」
窘めるリアムの声に「うん、気をつける」と素直に受け入れる。そうか、前に聞いてたけど、犬や猫属性の中には収納や湯沸しも魔力で出来ない人がいるんだな。その人たちにしてみたら喉から手が出るほど欲しい魔力だろう。
つまりあれだ。前世界のオレが金持ちセレブを羨ましく思ったのと同じだろう。もし金持ちに「金などもう要らない」と言われたら、速攻殺す。平均50点顔の奴の前で、超イケメンが「女なんか飽きた」と言えば殴られても文句言えない。そりゃもう顔の形が変わるほど殴るわ。
「まだ具合が悪いのですか?」
シフェルが顔を覗き込んでくる。相変わらず綺麗な顔してるな。でも右頬にうっすら傷痕があるのは……もったいないが、本音だと「ざまぁ」だ。巨乳の別嬪さんを嫁にするなんて、もげればいいのに!
「余の部屋で休むといい」
「陛下、あなた様の仕事は残っていますよ」
「……今日くらい許せ。明日はセイもそなたも出掛けるであろう?」
時間がないのだと唇を尖らせる子供っぽい仕草に、オレはぼんやりした頭で「可愛いなぁ」と呟いていた。頭の中だけのはずが、声に出ていたようで……。
「あ……ありがとう」
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