248.新しく作ればいいじゃん(3)

 リアムが女だから、襲われたら未遂でも噂を立てられる。実際に何もなくて助かったとしても、実際は暴漢に汚されたのでは? と貶められるのが確定だった。襲われる前に彼女を助けなくてはならない。だが襲われなければ、敵の排除理由が……。


「なあ、レイル。オレの常識がおかしいなら言ってくれ」


「なんだ?」


「竜属性は12歳の外見でも、実際は倍の24歳だろ? なら、24歳は結婚しててもおかしくないんじゃないか??」


「……そうだな」


 考えながら肯定される。24歳同士なら、成人扱いで結婚できるだろ。


「ただ、竜属性だから……」


 どうしたって体が子供だ。見た目が12歳のガキが、同じ年齢の子を娶ると言っても、良くてお飯事扱いだろう。


「12歳の皇帝陛下の治世があるのに、12歳の女帝陛下がダメな理由はない。その配偶者が竜殺しの英雄様だぞ?」


「自分で言うな」


 戯けて自分を英雄様と呼んだ意図を察して、レイルが笑い出す。そんな彼に続け様に押し込んだ。


「だってさ、オレが暗殺されかけた理由って、皇帝の地位に近いからだろ? つまりオレは皇帝になり変われる可能性があるってこと。そんな実力者が首を垂れて、妻の玉座を支えると言ったら……」


「宮殿でふんぞり返ってるお偉いさんが卒倒する、か」


 抜け道を探るように唸るレイルへ、さらにダメ押しだ。


「民が後押ししてくれたらどうよ」


「どういう意味だ?」


「聖獣の主人が女王陛下を望んでる。異世界人だからこの世界の政に関われないオレが、愛した皇族女性と結婚する話を美談に仕立てて、上手に噂を流す」


「情報操作か」


「やだな。噂程度だよ、多分ね」


 そんな大袈裟な話じゃない。国民が望んでる状況を作り上げればいいだけだよ。新しく国を興すより早いだろ? にやっと笑ったオレの金髪を乱暴にレイルがかき乱した。


「異世界ってのは、よほど殺伐とした世界みたいだな。お前みたいなガキがうじゃうじゃいるんだろ?」


「いーや、平和で退屈で欠伸が出そうな世界だぜ」


 ここで握手を交わし、結界を解いた。音が急激に耳を刺激して、なんだか擽ったい。足元の影から出てきたヒジリが、擦り寄った。


『主殿、忘れておるようだが……東の王族が死体のままぞ』


「「あっ」」


 奇しくもレイルとハモった。すっかり忘れてて、そのまま出てきちゃったよ。ぺろっと舌を出して戯けると、大急ぎでベルナルドを手招いた。護衛だから連れていかないとね。


「転移魔法で行って、生き返らせてくる。悪いけど頼むわ」


「しょうがねえ。行ってこい」


 ひらひら手を振って許可を出すレイルを残し、オレはベルナルドの手を握った。


「行ってきます」


「おう、飯の支度までに戻れよ」


 日常会話の挨拶がなんだか嬉しくて、オレはにやつく頬を抑えながら飛んだ。

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