33.朝から衝撃的シーンと事実(3)

 言葉の直後、新しいシャツを羽織る。今まで来ていたシャツを魔法で綺麗にしてから、収納魔法に放り込んだ。そのまま今度は下着とズボンを引っ張り出す。動き回ることを考えて7分丈にしたズボンをヒジリに預け、躊躇いなく着衣を脱いだ。


「キヨっ!!」


 叱りつけるシフェルの声にびくりと動きを止め、大きく目を見開く。すると真っ赤な顔を両手で隠しながらも、隙間からちら見しているリアムが「……本物」とよくわからない発言をした。


 リアムの視線を辿り、オレは大事なところがすっぽんぽんだと気付いて、新しい下着を身に着ける。同性同士、別に珍しいものがぶらさがってるわけじゃない。そもそも、リアムもシフェルも付いてる……よな? まさか異世界人だけぶら下がってるなんてオチはいらないぞ?


 カミサマに脳内で「フラグじゃありませんように」と祈りながら、短め丈のズボンをはいてベルトを締めた。シャツ同様にクリーニングした服を収納空間へ放り込む。取り出したホルダーを手早く装着して銃をいれ、腰に巻くベルトタイプのホルダーへナイフを収めた。


 銃弾を入れたベストを羽織って、ぐるりと装備を確認する。


「よし、OK」


 まだ真っ赤な顔を手で覆っているリアムに、「準備終わったぞ」と声をかける。まあ隙間から見てたから、言わなくても分かってると思うけど。


 シフェルは天を仰いで世を儚みそうな雰囲気を漂わせていた。床に膝をついて嘆く姿は、どこかの美術館の絵画のようだ。タイトルは絶望とか、そんな感じ。


「どうしたの?」


 ぽんと肩を叩くと、我に返ったシフェルが突然オレの頭を揺さぶった。がくがく揺れていると「昨夜からの記憶がなくなればいいのに」と怖い呪文を呟いている。


「シフェル、余は……セイのつがいになる」


「ダメです!!」


「同衾したし、アレも見たし……余はセイがいい」


 なんだろう、この疎外感。揺すられながら2人の意味不明の会話を聞くオレは、話の中心人物なのに無視されてる気がした。意思表示ひとつ許されなさそう。


「あの……」


「余はセイと番う!!」


 何の宣言ですか。つがうってナニ? いや、もしかして自動翻訳が壊れてたかとカミサマを疑ってみたりする。番という表現は小鳥飼ってる人がよく使う言葉で、つまり人間に置き換えると夫婦なわけで……なんでオレがセイと番うんだ?


「セイ、構わないな?」


「……たぶん」


 ようやくシフェルの手が離れたので、揺すられる状況から脱出した。しかし状況が理解できないので曖昧な返答すると、泣きそうな顔でリアムが「嫌か?」と尋ねてくる。上目遣いの蒼い瞳が潤んでるとか、くそ! 卑怯だぞ!! 断れないじゃないか。


「よくわかんないけど…いい「ダメです!!」


 最後の部分をシフェルが遮ったが、ときすでに遅し。しっかり「いい」を聞き取ったリアムは嬉しそうに頬を染めて抱きついてくる。


「番はもっと慎重に選ぶべきです! あなた様は皇帝陛下なのですよ。それにキヨは異世界人ですし」


「もう許可は得た。セイと余は番だ」


「あのぉ……」


 言い争う主従に恐る恐る声をかける。


「同性同士でも番えるの?」


 何かのシステムですか? 素直な疑問に、リアムは美しすぎる笑みで「余は女だ」と爆弾発言をかました。

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