265.断罪劇の意味が違う!!(3)
「一人抜けてる」
「エロラ伯爵か? あれは」
「メッツァラ公爵閣下の配下ですな」
じいや、情報通だな。あの場面で判断したとか? 客商売だから人間関係の把握に長けてるのかも。うん、いいお買い物だった。じいやは大切にしよう。
「よかった、エロ伯爵の領地襲ってたら殴られるオチじゃん」
「エロラ伯爵ですぞ」
一文字足りないくらいで、ベルナルドに注意されてしまった。実際、貴族年鑑を覚える時にこういう変換してたんだよね。あれだよ、あの歴史の年号覚えるゴロと一緒で、この方がするっと出てくる。
「あまり変わらないじゃん」
「人名ですからな。しっかり覚えてくだされ。キヨ様もお名前を間違えられたら腹が立ちますでしょう」
ベルナルドの言い分はもっともなんだけど。
「自分の名前も満足に覚えてない奴だぞ、ないない」
げらげら笑いながらレイルが指摘した。事実だけど、ちょっとムッとする。
「休憩終わり。広間に戻るよ」
隣で寝転ぶヒジリの背に乗った。のそりと起き上がる黒豹は、全然重そうな様子を見せない。そのまま歩き出した。羨ましそうな顔をするマロンを手招きし、人型になるようお願いする。
準備完了かな。スノーは当然のようにマロンに抱っこされ、コウコはベルナルドに絡み付いていた。青猫がいないのはいつものことだ。
「打ち合わせはいいのか?」
「事情がわかってれば平気。それにシフェルもそろそろ戻ってると思うよ」
以心伝心は気持ち悪いが、まあ向こうの状況も大体わかる。機嫌を損ねたリアムに説明して納得させ、再び玉座に座らせるのにあと5分かな。
貴族達はそのまま残った人が多かったらしく、あまり変化がなかった。赤い絨毯の上を歩いたヒジリの背に跨ったまま、オレは隣のシンを見上げる。
「シン兄様、手を繋ごう」
「おお! もちろんだ。可愛い弟の願いなら叶えるぞ」
オレが願わなくても繋ぎそう。失礼な感想を抱きながら、シンと手を繋ぐ。仲良しの王族兄弟を、周囲の貴族が気味悪そうに眺めていた。こういう視線をスルーできるシンの心は強い。さすが注目になれた王族様だった。
「セイを投獄し傷つけようとした者らに対する裁判は、明日から行う。関わった者は厳罰を覚悟せよ」
リアムが顔を見せるなり、宣言した。頭を下げる貴族の顔をじっくり確認させてもらう。マロンが眉を寄せて、ある貴族を指さした。記憶して、もう1人。そこでマロンは無邪気に笑う。終わりみたいだ。褒めるために空いた手でマロンの髪を撫でて、引き寄せて頬にキスをしてやった。
この程度の報酬で、ここまで働いてくれるの……優秀すぎね?
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