第21章 ざまぁラノベで見た展開

124.皇帝陛下のおもてなし(1)

「楽しんだようで何よりだ」


 笑いながらお茶を口にするリアムへ、肩を竦めた。彼女が望むまま、オレのやらかした口喧嘩が暴露されていく。シフェルの説明を聞き直すと、オレがすごく性格悪いみたいじゃん? いや、良いとは言い切れないけど。


 実物の2割増しくらい、悪い奴っぽい。話の合間に焼き菓子をリアムに差し出した。ぱくりと食べる姿が可愛くて、微笑みながら秘密の恋人を見つめる。こんなに綺麗な子が未来のお嫁さんなのだ。そう思うだけで、嫌味なおっさんとの口喧嘩や王侯貴族の面倒臭い儀式もこなせる気がした。


「礼儀作法の勉強は捗ってるか?」


「うん、一応教師役のクリスから満点もらったし、先日のウルスラも褒めてくれたぞ」


 最低限の嗜みとして、貴族としてのマナーは学んだ。その上で将来を見据えて皇族としての振る舞いも覚えてきた。にっこり笑って断言すると、リアムが興味深そうに肘をついて見つめてくる。そのまま笑顔で応じていると、笑いながら視線を逸らした。


「確かにその胡散臭い笑顔は、貴族らしい」


「褒められた気がしない」


「褒めていないですよ」


 リアムに微妙な言葉をいただき、オレが渋い顔をしたところに、シフェルに止めを刺された。


「うう……頑張ってるじゃん」


 褒めてくれとぼやいたら、足元で寝ていた黒豹に足首噛まれた。違う、そういうのは求めてないから。呻きながら治癒されていると、頭にぽんと手が乗った。そのまま撫でられる。


「頑張っていて偉いぞ」


 魔力を使う機会が多いので、伸びた分だけ切っている。肩の肩甲骨に触れるあたりで揃えた理由は、結べる長さだ。毎朝欠かさない戦闘訓練はもちろん、料理の時も短い方が絶対に楽だった。魔力を使うたびに伸びて首筋で止まると、結べなくて不便なのだ。苦肉の策として結べる長さをキープしていた。


 その白金の髪がお気に入りのリアムが、優しく撫でてくれる。ふわりと良い香りがして「女の子っていいな」と呟いた。心の中の声が盛大に漏れてしまう。


「あ、ありがとう」


 照れて真っ赤なリアムが俯く。残念ながら撫でてくれていた手が離れてしまった。


「あの……オレのデビュー戦に合わせて、リアムが舞台を設えてくれるって聞いたんだけど」


 微妙に落ちた沈黙の間、シフェルは呆れ顔で紅茶を味わっていた。たぶん、心の中で「このリア充め!」をすごく上品にした言葉で罵られてたと思う。


 慌てて話を別の方へ向けた。

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