124.皇帝陛下のおもてなし(2)
「5日後に貴族を集めて祝賀会を行う予定がある。戦勝祝いだが……セイの舞台にぴったりだろう?」
リアムの無邪気な発言に、シフェルが補足した。元々予定のあった祝賀会だから罠を疑われる可能性が低く、幸いにして西の国の王族を呼んでいるそうだ。他国の目もある場所でやり込めたらすっきりするんじゃないか? そんなニュアンスの話に、オレの口元が緩んだ。
「西の国の王族って……処刑しなかったっけ?」
国王や跡取りの首を落としたと聞いた気がする。記憶を手探りで引っ張り出せば、シフェルが「よく覚えていましたね」と感心してるフリでバカにされた。だが情報自体は正しかったらしい。
「国王と王太子は首を落としましたが、王女殿下が残っています」
「お嬢殿下?」
ぐいっと耳たぶを引っ張るの、やめてぇ。マジ痛い。引っ張られた分だけ立ち上がって身を乗り出す。千切れそうな痛みに呻きが漏れた。
「キヨ、きちんと聞く気はありますか?」
必死で頷くと、手を離してくれた。耳が真っ赤になってるんじゃないか? 可哀そうなオレの耳……撫でながら座り直すと、シフェルが続きを教えてくれた。
「王太子の妹姫で、とても大人しい方です。偶然ですがあの戦争の最中、南の国の王太子と縁組の顔合わせで留守にしていました」
縁組の顔合わせ?
「ああ、お見合いか」
「オミアイ……?」
この単語は異世界語らしい。通じなかった。遠回しな表現された時は、異世界に該当する言葉がないと考えた方が良さそうだ。
「お見合い。さっきの縁談の顔合わせのこと」
「異世界の表現ですか」
「うん、そんなとこ。世話好きな周囲の人が勝手に、この人とこの人は合うんじゃないかしら? と縁談を持ちかけて、2人を会わせる行事かな」
引き篭もった当初に、近所の世話好きなおばさんが、「キヨヒト君も彼女が出来たら外に出るわよ」と勝手に女性を連れてきたことがあった。会う気もなくてドア越しに断った記憶は、後から考えると相手に失礼だったよな。彼女だって無理やり連れてこられた可能性があって、顔見て互いに納得して断った方が礼儀正しかったと思う。
まあ異世界に来た今となっては、相手にトラウマとか植え付けずに済んだから怪我の功名みたいな? あれ、使い方間違ってるかも。
「キヨ、聞いてますか?」
「うん、一応」
オレの説明の後、祝賀パーティーの話してくれたシフェルが、念を押してくる。ちゃんと理解してるぞ。
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