39.大量のピアスで魔力封じ(3)

「ただの御守りだ」


 御守り……神を信じる宗教がないのだから、本当は違う意味なのだろう。御守りと自動翻訳するカミサマの与えた能力に疑問を持ちながら、鏡で移したチェーンに小さな青い石が付いていた。透き通った小ぶりの石を透明の膜が覆う形でチェーンにぶら下がっている。


「ありがとう。リアムがくれるなら効果ありそうだ」


 ふと、貰いっぱなしだと気付く。だが残念なことに女の子にプレゼントできるような小物はないし、準備しようにも間に合わないだろう。


「うーん」


「どうしました?」


「あのさ、リアムに何かあげようと思うんだけど……」


 手持ちがないと両手のひらを上にあげてお手上げを示すと、シフェルがにやりと笑った。怖い、何か嫌な感じがする。彼が口を開く前に止めないと! 


「簡単ですよ。戦争に勝って、西の国から領地を奪って献上すればいいでしょう」


「え……それ、簡単なの?」


「頑張りなさい」


「期待しているぞ、セイ」


 シフェルの重すぎる期待と、リアムの可愛いお強請りに、オレは頷くしかなかった。





 大量の食料を収納したリストをポケットに入れて、ベルト部に投げナイフを装着する。レイルに貰った銃を手早く分解して確認してから組み立てた。おそらく暗闇でも出来ると思うくらいには練習させられた。最初は手を挟んだりしたけど。


 ホルダーに銃をしまって上着を羽織る。


「気をつけるんだぞ、セイ」


「無事に戻るからな」


 手を繋いで集合場所に向かいながら、後ろのシフェルを無視した会話を楽しむ。そういえば、彼は出発前の時間を奥さんのクリスと過ごさなくていいんだろうか。


 集合場所につくと、クリスをはじめとしてジャック達傭兵も準備を整えて待っていた。騎士服姿のクリスが武器を装備した姿に眉をひそめて振り返った。


「もしかして?」


「言いませんでしたか? 我々騎士団も出ます。陛下の護衛は兄に任せました」


 聞いてない。が、ちょっと安心する。クリスもシフェルも出払ったら、誰がリアムの傍に残るのかな? と思ったから。手合わせしたスレヴィの腕前なら安心だった。


 西の自治領から戻った際に使った魔法陣とよく似た模様の絨毯が敷かれる。地面に敷いた魔法陣の出口は、戦場近くにもう運ばれているだろう。ひとつ息を吸って、リアムの手を離す。ジャック達の前まで歩いて、拳を軽くあわせた。


 さて、二度目の戦場へ行きますか。

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