16.食事をしたらお勉強(3)
「おい、大丈夫か?」
揺すられて我に返る。戦術講義は終わったらしい。慌てて周囲を見回すと、満足げに教科書らしき本を片付けるシフェルと、青ざめた顔で気遣ってくれるノアがいた。
内容、まったく覚えてない。不思議に肩と背中が痛い。何があった?
状況が理解できないオレが震えながら、目の前の本を掴む。戦術理論がびっしり書かれた本を手にしたとたん、震えが酷くなった。
「治癒魔法使える奴のところへ行くか?」
え? 治癒……魔法? なんで?
顔中疑問だらけのオレが首を傾げる。と、引き攣れて背中が痛かった。なんでだろう、ちょっと震えが止まらないんだけど。
「キヨ、
「
「よろしい。ではまた明日」
ご機嫌で去るシフェルを見送ると、身体の力が一気に抜けた。崩れるように倒れこむと、ノアが慌てて支えてくれる。
「あ、ありがと……なんか足の力が」
「抱き上げるぞ」
焦った様子で抱き上げられ、そのまま運ばれる。どこへ向かうのか聞く気力もなく、ぐったり抱き上げられたままうとうとする。
手荒く……と表現するのはおかしいか。足で乱暴にドアを開いたノアが、室内にいたサシャに声をかけた。
「悪いが、治療してくれ」
「何があった?」
異常を察したらしいサシャが足早に近づき、背中を見て顔色を変える。唸るような声を上げたあと、手早くシャツを脱がされた。
「ん……寒っ……」
ぞくぞくする。具合は悪いし、何があったのかわからない。ぼんやりする頭の中で、図形のような陣形が踊りながら流れていた。
あれは
「痛ぇ……」
背中に焼けるような激痛が走り、顔を顰めて振り返る。自分の背中は見えないが、サシャが真剣な顔で手をかざしていた。緑色の光が注いでおり、触れない距離の手のひらを翳された場所が痛い。
「シフェルの奴、無理やり詰め込みやがった」
舌打ちしたノアが、珍しく声を荒げた。普段淡々とした態度の奴だから首を傾げるが、痛みに動きを止める。何を怒っているのか、まったく理解できない。
「……確かに、無茶な方法だ」
サシャが眉を顰める。
「オレ、何か酷いことされた?」
熱があるのか寒いし背中が痛いけど、それ以外は座学だった筈だ。早朝の訓練みたいに銃で追い回されたり、爆発に巻き込まれた記憶はなかった。
「ああ」
一言で肯定される。そこにジャックが駆け込み、青ざめた顔で覗き込んだ。手に持っているのは、大きな籠で果物が入っている。
「まさか術まで使って詰め込むなんて」
渋い表情のジャックが大きく溜め息を吐いた。
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