224.国の消滅、危機一髪?!(3)
コウコが最初に文句を口にする。彼らだけ褒められたのが面白くないと、尻尾で地面をぺしぺし叩いた。
『我はどちらでもよいぞ』
『僕はぁ、命令されるのヤダな』
ヒジリは別段皇族であるリアムに不満はない様子で、ブラウはとても猫らしい理由だった。動くのが面倒なんだろ、お前。
「コウコ、北の王族はオレの家族で実家だから。そのままキープ」
『主人の命令ならよくてよ』
頬を染める龍の短い手が頬に伸びるが、届かない。じたばたする手がぺたりと鱗に落ち着いた。どう見ても短い手で万歳する赤い蛇……。いや余計なことを言って、彼女の乙女心を傷つけてはいかん。それはセクハラでパワハラだからな。
「……そんで、実験とやらはどうなった」
呆れ顔のレイルに促され、慌てて契約状況を説明する。主従契約に基づいた、土地の臨時管理契約……と説明した。オレが生きている間に次の王族を見つければいい。聖獣のお眼鏡に適う奴が生まれるかもしれないし、見つからないままオレの寿命がきたら逃げるしかないんだけど。
じっと聞いていたジャックが、レイルに向き直る。
「おい、今の情報を流したほうがいいぞ」
「言われなくても大々的に広報してやるよ」
にやりと笑って受けた情報屋が、嬉しそうにピアス経由で情報を流している。意味がわからずきょとんとするオレを取り残して。
とてとてと走ったマロンが抱きつき、咄嗟に受け止める。勢いに転びかけた尻をヒジリが支え、たたらを踏んだ足がブラウの尻尾を踏んだ。コウコがマロンからオレの首に移動し、スノーも「えいっ」と可愛い掛け声でしがみつく。
その間にベルナルドが、落ちた上着を拾って畳んだ。あんた、本当に侯爵だったの? 経歴詐欺を疑うくらい甲斐甲斐しいんだけど。我らがオカン、ノアが追いついてペタペタと腕に触る。冷えた肌に「風邪をひく、熱を出すぞ」と文句を言いながら、ベルナルドが回収した上着をかけた。
こちら側は暖かいけど、冷えた肌はそのまま。素直に上着に袖を通した。鼻が垂れてきたと思ったら、オカンがしっかり拭ってくれる。オレは幼児かっての。でも素直にチーンと鼻をかんだ。
吐いた話を聞くと、今度は収納から水筒を取り出して差し出す。口を濯いで、ついでに少し腹に入れた。ようやく人心地ついたぞ。
踏まれた尻尾を嘆くブラウがごろんと寝転ぶ。
「ジャック、どうして情報公開するんだ?」
広報するって言われても、秘密にするんじゃないのか? オレが契約者だと知ったら、襲われる。そう尋ねれば、ジャックがにやりと笑った。
「お前が死んだら国が滅びるんだぞ? 聖獣はお前を殺した奴に協力なんてしない。つまり、手を出したら終わりだ」
ああ、なるほど。そういう考え方もあったんだ。積極的に情報をだして牽制する方法は、宰相家の坊ちゃんだったジャックらしい提案だった。
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