230.黄泉がえり、って言わない?(2)
パチン、指を鳴らしてお茶セットも残った菓子も……生き物以外を収納へ片付ける。魔法で浮遊させて突っ込むイメージだ。魔法使いっぽさ満点なので、試してみたかった。思ったより難しかったので、あまり多用したくないな。
忘れられたポットが落ちて割れそうになり、壺同様に受け止めたブラウが悲鳴をあげる。
『あちっ! 主、僕の美しい毛皮が、毛皮がぁあああ!!』
「それって目がぁああ! ってやつか」
テレビで再放送してるの何回も見たな、あのシーンと破滅の呪文は、たぶん日本人の半数以上が知ってるぞ。
「聖獣って火傷するの?」
大変と慌てるジャックの妹さん……えっと、セシリアさんだっけ? を無視してヒジリに尋ねる。起き上がって伸びをする黒豹はあっさり否定した。
『そのような愚か者は聖獣ではない』
「だそうです」
ブラウが舌打ちしながら身を起こした。小声で付き合いが悪いとぼやいている。いや、お前のノリについていける奴なんてこの世界にいないだろ。向こうの世界に染まりすぎだよ。
「誰もオレらを歓待してくれないからさ、勝手にお茶飲んで待ってた」
言外にこの家のせいだと文句を突きつけると、苦い顔をしたジャックが唸る。
「だが玄関じゃなくても」
「だって、ジャックが出てくるの玄関からだろ?」
他の場所で待ってて、すれ違ったらどうするんだよ。突きつけた事実に、ジャックが目を見開く。おまえ、気づいてなかったのか。もし庭や別室にいたら、オレ達が出かけたと勘違いして駆け出したんじゃないか?
「キヨ様の洞察力と先見の明に感服いたしました」
感動しているベルナルドに、そうだろ? と得意げに胸を張る。しかしレイルが手持ちの菓子を口に放り込みながら、指摘した。
「それほど高尚な話じゃねえ。さっさと行くぞ」
なぜか東の王族復活に乗り気だ。探し人が東の王族にいるとか言わないでくれよ。フラグじゃなくて、本当に洒落にならん。だってまた殺すんだから。
「こらっ、勝手に入り込んではいかん」
なにやら叱られながら駆け込んだ若者が、レイルを見るなり膝をついた。ずざざっと滑る音がしたぞ。
「ボス、孤児の収容終わりました。それからこちらが要望の調査結果です」
「ご苦労さん」
ぽんと頭を撫でて、レイルが受け取った書類を確認する。それからにやっと笑い、収納から取り出した袋を渡した。ひとつじゃなくて2つだ。
「これをガキらにくれてやれ、こっちは金だ。もう少し留守を頼む」
「はい、ありがとうございます」
にっこり笑うと、門じゃなくて壁を飛び越えて帰っていった。何あの運動神経の良さ。あと、あの子……レイルの部下みたいだけど、女の子みたい。
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