230.黄泉がえり、って言わない?(3)
「今の子……」
「ああ、シャーリは連絡専門だ」
情報収集してる組織の配達専門係か。集める連中と確認する奴も別にいるっぽい言い方だ。でかい組織みたいだけど、深く聞くのはやめておこう。
「女の子だよな?」
「お? よく気づいたな。さすがはあの人の婚約者だけのことはある」
ここでリアムの名を出すほど馬鹿じゃない。曖昧に濁した言葉に、互いの口元がにやりと笑みを浮かべた。
「馬を用意させろ、すぐに出る」
偉そうに命令する姿を見ると、やっぱりジャックは貴族だと実感する。若い執事かもと思った青年が戻ってきて、慌てて馬の手配をした。その間にオレはマロンに飛び乗る。宙返りできる運動神経を手に入れたオレに、馬に乗るくらい出来ないわけがない。
実際のところはマロンが屈んで手伝ってくれたんだが……。運ばれた馬に飛び乗り、レイルもベルナルドも準備完了だ。ジャックは妹セシリアと何か言葉を交わしてから、慌てて馬上の人となった。
「行ってくる」
先頭はレイル、続いてジャック、オレ、後ろを守るのはベルナルドだ。コウコはベルナルドの筋肉に巻きつき、スノーはマロンの鬣にしがみつく。ブラウは走るのが嫌だと影に飛び込み、ヒジリは勢いよくオレの隣を走った。
馬と人はともかく、オレとベルナルドだけだとサーカスみたいだ。奇妙な一団だが、街を出ると全力で走り出した。誰もいない道が途中から未舗装になる。その先は白い雪原だった。王族を捨てる馬車が通ったなら轍くらい残ってないかと思ったが、見事に真っ白で平ら。何もわからない。
「方角合ってる?」
「問題ない」
地元民のジャックが保証し、報告を受けて場所を把握したレイルも地形を確認して頷いた。ちなみにオレはようやく馬の乗り方を覚えつつあった。膝の少し上で強く馬の背を挟む。で、尻はつかない。これが正しい乗り方みたい。
少なくとも全力で駆けている今の状態で、前の元王族や宰相家の元跡取りがそうやって乗ってる。後ろをちらりと確認すると、騎士で前侯爵閣下も似たような感じだった。
ヒジリに乗るときもこうしたら酔わないのか。閃くように気づいたが……あの揺れ方じゃ無理か。馬と比じゃない脈動するような四次元の揺れだった。全身でしがみつかないと落ちる。
「あの辺りだ」
指差されたのは、雪原にポツンと立つ1本の大木だった。なるほど、あれが目印……ん? 根元で何か動いてる気がしないか?
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