83.沈んで笑って、食料ピンチ!(1)
お前は違う――と突き放された気がした。
傭兵がはみ出し者なら、異世界人は世界すらはみ出してるのに。こうして一緒に笑ったり、同じご飯食べて、一緒のテントで寝たのに……まだ仲間じゃないのかな。
「……ったく、そういう意味じゃねえよ。泣くな」
「泣いてない」
言い返しながら、滲んだ視界を誤魔化すように顔を上げた。まだ森を抜けていないから、木漏れ日がちらちら眩しくて、光が目に沁みたってことにしよう。ずずっと鼻をすすり、ばさりと上に掛けられたシャツに顔をしかめた。
「汗臭い」
「うるせぇ」
レイルとの軽快な言い合いが心を軽くしてくれる。シャツを取るフリで、目から溢れた汗をぬぐった。そう、これは汗だ。涙じゃない。どこかのアニメでこんなやり取りあった気がする。こんな時でも思い出すのは過去の癒しアニメなのは、いかにオレが引き籠ってたかの証明だな。
『主殿、よくわからぬが……』
なんだ、慰めてくれるのかよ。ヒジリは優しいな。ぎゅっと首に抱き着いて、揺れる筋肉を堪能する。取り囲んでいる傭兵達も足を緩めないから、相変わらず人の壁に守られたオレは熱を理由に伏せていた。
『我はこう思うのだ……』
『そろそろ腹減った』
「ぶっ!」
吹き出して、斜め後ろを歩く青猫を振り返る。身を起こしたオレの白金の髪を、順番に傭兵達が撫でてくれた。これだけでいいじゃないか。
気遣ったり笑わせてくれる聖獣達がいて、こうして見守る強面だけど本当は優しい傭兵連中がいる。帰る場所があって、そこには美人なお嫁さん(まだ候補で仮)が居てくれるわけだから。オレはこの世界で一番恵まれてるだろうよ。
さっきの湿っぽい雰囲気を吹き飛ばすように大笑いして、生理的に滲んだ涙を拭いて誤魔化して、一緒になって笑ってる傭兵達と手を叩きあう。空気読まないバカだと思ってたけど、ブラウも役に立つ。いやめちゃくちゃ空気読んでるんだろう、たぶん。
「お~い、本当に昼休みになったぞ」
少し離れた場所から、ジークムンドが声を上げる。隊列の速度が落ちたので、先行して状況を見てくれたらしい。子供が見たら間違いなくなく強面だけど、実は子供好きなんだと思う今日この頃。だってさ、めちゃくちゃオレの面倒見てるから。
内面の年齢考えると面倒みられるのもどうよ? な24歳ですが、何か? この世界って属性のせいで実年齢がまちまちなんだが、誰も気にしてない。見た通りの年齢で扱ってくるのは、常識の範囲内と納得しておこう。
「ヒジリ、ありがとう」
背から下りると、残念そうにしながらも毛繕いを始めた。照れ隠しかな?
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