199.食事の順番は揉める(3)

 大急ぎで自分の皿の残りをかっこみ、頬をリスの様に膨らましたまま「ほひほーははぁ」と声を出した。


「行儀が悪い」


 ノアに叱られ、ジャックと2人がかりで両側から頬を押される。結局頬張った分を食べ終えて、改めて両手を合わせる羽目になった。これが「急がば回れ」か!


 ご馳走様と改めて言い直し、果物片手のスノーの横を通り過ぎる。コウコはスノーに付き合うらしく、追いかけてこなかった。ヒジリはのそのそ歩き出し、足に首から肩にかけてを擦り付ける。


「マロン、悪い。見張りありがとう!」


 やっぱり足元の草を食べていた。他の聖獣がしっかりご飯食べたので、さすがに悪いことをしたと眉をひそめる。彼の器に野菜炒めを乗せて差し出すと、しばらく匂った後で口をつけた。


 酸っぱいのは聖獣なら問題ない。もそもそ食べる彼の速度が途中から早くなる。味は気に入ってもらえたらしい。食べ終えたマロンはご機嫌だった。馬の尻尾があんなに左右に振られるの、初めて見る。


『ご主人様、ドラゴンを一時的に解放しようと思うのです』


「呼び戻せるならいいよ。あ、ヒジリ。彼らを治せる?」


『……後で使うのであったな』


 仕方ないとぼやいて前に出るから、舐めるのかと思ったら魔法陣でドラゴンを包んで治癒する。光が消えた頃には、破いた羽も元どおりだった。


「ヒジリ、気のせいかな。舐めなくても治せるの?」


『当然であろう』


「じゃあ、なんでオレは毎回舐められるんだよ」


 必要がない行為じゃないかと抗議すると、ヒジリは髭をピンと張って言い放った。


『舐められないなら、今後主殿の治療を拒否する』


 ぺちっと軽く叩いたものの、承諾するしかない。なんて不遇な主人なのか。主従が逆転してないか?


 少し長い草の間を歩くオレの肌は、あっという間に虫に喰われて赤くなっていく。気付いたマロンがひょいっと襟を咥えて背中に乗せてくれた。おかげで足が虫の餌食にならなくて済む。ぽんと彼の首筋を叩いて礼を口にした。


「サンキュ、マロン。後で回収できるならドラゴンは離していいよ」


 餌を探すのも大変だし、好きにさせておいて使う時だけ呼んでもらおう。卑怯な作戦に、マロンが甲高い鳴き声をあげた。途端にドラゴン達はあたふたと散っていく。


 騒がしい空を見上げると、鳥があちこちに飛んでいた。ドラゴンが飛翔したことで、驚いたのだろう。こういう鳥が襲ってくる映画あったな〜、怖いやつ。


『主人、持ってきてあげたわ』


 後ろから偉そうなコウコの声がして振り向く。手がないのにどうやって? と思ったオレの前に傭兵達が鍋や器を抱えて並んでいた。オレがいない間に、傭兵の指揮官は赤蛇になったのかな。

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