42.卑怯な作戦ほど効果的(3)
シフェルを先頭に、騎士団は森を抜けて街中に潜入していた。西の王都には地下通路がある。その情報をレイルが掴んでから1週間後、ようやく届けられた地図を広げた。
「この先を左、3本目の交差を右ですね」
下水道を使った通路を想定していたが、まったく違う通路だった。かつて西に存在した古代文明の町並みがそのまま残されている。不思議と天井部分が残されているため、上の街が落ちてこないのだ。見上げても仕組みはよく分からなかった。
「なんだか怖いわね」
クリスの指摘ももっともだ。誰もいない無人の町は、ひどく不気味だった。自分達の足音だけが生きた者の存在を示し、日が当たらない地下なのに花壇に花が咲いている。さっきまで生きていた町が、突然人だけ消えたような印象を与えた。
「ここです」
他の騎士も気味が悪いのか、剣や銃の柄に手をかけたまま歩いていた。ようやく王城の下にたどり着き、後から人為的に作られた梯子に手をかける。魔法が使える者は浮遊を使い、崩壊の危険を考慮して1人ずつ梯子を使うことにした。
最初に上にたどり着いたのは、竜である魔力量豊富なシフェルだ。浮遊で上の扉を押し開いて、滑るように城の地下に降り立った。魔力感知で罠を探すが見当たらない。レイルの調査どおり、ここは逃走用の脱出路として考えられているらしい。侵入される用心は見受けられなかった。
下から上がってきたクリスに手を貸し、次々と騎士達が上がってくるのを確認する。半数ほど数えたところで、一番近い扉に手をかけた。鍵はかかっていない。この場所は酒の貯蔵庫として利用されているらしく、大量の酒瓶が並んでいた。扉を開くと、目の前に石造りの階段がある。
「どうするの?」
「予定通り城を落とします」
隊長であるシフェルの言葉に、騎士達は武器の確認を始めた。彼の言う城を落とすという表現は『西の王の首を落とす』と同意語なのだ。王の首をとれば、国も城も落とせる。
「いきます」
作戦はすでに通達してある。囮になったキヨ率いる傭兵部隊に注意が向いている隙に、城の中枢を占拠する予定だった。騎士が剣や銃を抜いて構える。
扉をすり抜けて走り出したシフェルの後ろを、それぞれの役目を果たすために続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます