97.英雄の帰還(2)
「このアクセサリーうざい、重い」
「「「はぁ?」」」
ノア、ライアン、ジャックに声を揃えて眉をひそめられた。何、このアクセサリー高額で売れるとか? もしかしてご褒美なの? じゃらじゃら飾り立てたシフェルに「罰ゲームかよ」とぼやいたけど、お給料の現物支給だったりして。
「それ、ほとんどが勲章だぞ」
「ネックレスやペンダントにしか見えない」
大量のネックレスやペンダント、大量の襟章で服が重い。これが飾りじゃなく、勲章だってのか。
「ん? オレ勲章もらった記憶ないけど」
「あれだけ活躍して勲章なしで国に帰るのはない。そもそも昨日の陛下のお越しは、勲章の授与だったんじゃないか?」
「えっ!」
そんな話聞いてない。
「勲章の授与って、あれだろ。謁見の間で大々的に貴族が並ぶ真ん中でもらうんじゃないの!?」
「「「「やっぱ異世界人だからな(か)」」」」
非常識と異世界人という単語がイコール扱いになってきた。サシャまで加わって溜め息を吐かれる。でもちゃんとジャックが説明してくれた。
「勲章は事前に授与されて、それをつけて帰還のパレードに臨むんだよ。まあ傭兵には関係ない話だけどな」
肩を竦めるが、詳しく知っているってことは……敬礼の件もあるので勘ぐってしまう。聞きたいけど、自主的に口にするまで待つのが大人だ。見た目は子供でも中身24歳だからな。そこはぐっと堪える。
ライアンに支えられた敬礼も辛くなった頃、ようやく兵士の転送が終わった。血が下がった腕をぶんぶん振って血を戻す作業を、他の連中は笑いながら揶揄ってくる。ボクシングのポーズをとって、軽くジャブ打ったりしていると、聖獣達がぞろぞろ現れた。
黒い影の中から赤い蛇、白いトカゲ、黒豹の順で飛び出してくる。少しどころか、忘れそうなくらい間を開けて青猫が転がり出た。
『真打は最後に登場するものだ』
きりっと決めてるとこ悪いが「ただの遅刻じゃね」と混ぜっ返してやった。不満そうに鼻を鳴らしたブラウが、ヒジリに引きずられていく。首根っこを咥えられての移動だが、どう見ても序列はヒジリが上だ。しかも引きずる姿が捕らえられた獲物にしか見えない。
見上げた空は青くて遠い。風が冷たくて、長袖でよかったと身を竦ませた。
『主殿は我の背に乗るであろう?』
『あたくしなら浮いて運べるわよ』
『ドラゴン形態はどうですか!』
黒豹、赤龍、白トカゲの順でプレゼンされるが、青猫はごろんと寝転がっていた。本当にやる気ない奴だ。
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