175.不審物の正体判明!(3)

「ベッド畳んだぞ」


「こっちへ積んでくれ」


 北の戦場で一緒だった連中ばかりなので、手際がいい。毎日出したりしまったり忙しかったし、新しいベッドは折り畳みが楽になった。あっという間に積み上げたベッドも収納していく。それから、確認のために積み上げた着替えや武器をしまい込み、食料の残りを入れた。


 すべて片付けたところで、残った一角の荷物を眺める。


「結局、これって誰の荷物なんだ?」


 酒、くたびれた衣類、汚れた武器は長く手入れをしてない。旧式と呼んでいいのか判らないが、ファンタジーでありそうな剣や盾もあった。調理器具も鍋は錆びている。毛布や布のテントもあった。誰かの旅行セットみたいだ。


「捨てちゃおうか」


 使えそうなのは半分もなさそうだ。洗ってあるが首回りがくたびれたシャツを摘まんで首をかしげる。このまま砦に捨てておいても問題なさそうだった。


『ご主人様、これは前のご主人様の遺産です!!』


 飛び出した馬……うま? ウマ、だよな? 大きく上半身をかしげて覗き込み、不思議な生き物を眺める。いや、金のオブジェが頭に乗ってるから、間違いなくマロンなのだけれど。


 競走馬みたいな巨体が、小さくなっていた。ポニーよりさらに小さく、これでは大型犬と変わらない。姿かたちは馬なのに、ミニチュア。あれだ、馬の縫いぐるみに似ていた。


「マロン?」


『ほかにいません』


 当たり前のように返されて、慌てて頷いた。少し拗ねてるっぽい。よくわからないが、鬣の部分を撫でておいた。他の部分に触っていいか、馬を飼った経験ないから知らない。ただテレビでタレントが撫でてたのは、鬣だったと思う。


「前のご主人様の物が、どうしてオレの収納に」


『あれ? 聖獣が持ち歩いてる収納は、ご主人様が出来たら全部お渡しするものですが』


 他の4匹と契約してるのに、どうして知らないの? そう尋ねるマロンの金瞳に、オレはにっこり笑って4匹を呼び出した。


「ヒジリ、ブラウ、コウコ、スノー」


 のっそりと顔を見せた黒豹は視線を合わせず、コウコは舌をちろちろ出しながら赤蛇姿でとぐろを巻く。チビドラゴンのスノーは、足にしがみついた。顔を見せない作戦で粘る3匹はともかく、約1匹青いのが姿を見せない。


「ブラウ、出て来い。これは命令だ」


『横暴だと思うわけ』


「やかましい!」


 ごつんと青猫の頭に拳を振り下ろし、オレは腰に手を当てて聖獣たちを睨みつける。


「なんで言わなかったんだ?」


 収納物なんて受け取ってないし、その話も知らない。聖獣について勉強した際に載ってなかった情報だし、教えてくれてもいいじゃないか。別に無理に取り上げたりするつもりはない。前の契約者との思い出を大切にしたかったなら、そう説明すればいいんだ。


 のけ者にされた気分で口を尖らせたオレに、予想外の答えが返ってきた。

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