175.不審物の正体判明!(2)
オープンタイプの食堂テントは、多くの傭兵が集まって野菜を切っていた。オレの取り出した食材が、次々と運ばれる。指揮を執るノアが振り返った。
「キヨ、荷物の収納はいいのか?」
「片付けた方がいいぞ」
「味付けまでは作っておく」
口々に荷物をしまうよう言われ、それもそうかと納得した。こんな状態で襲撃されたら、荷物を諦めて逃げないとならない。それは困るだろう。何しろ食料から寝室用テント、ベッドに至るまで出しっぱなしなのだから。
「わかった。悪いけど任せる。手の空いてる人はテントとベッドの片付けお願い」
「命じればいんだよ、ボス」
そう言われても、君らのが年齢上だからね。前の世界で24歳だけど、年下って数えるほどしかいないと思う。しかも見た目が12歳のガキに命令されるのは、戦場だけで充分だろ。手近な荷物を収納へ放り込みながら、メモした。
「戦場で命令聞いてくれたら、あとは別に命じなくてもいいかな~って。人生経験はジャックやジークのが上じゃん」
「そう考える上司なんて、見たことねえよ」
「傭兵は戦場で役立つ奴隷くらいにしか思われてねえからな」
「その辺の地位向上はしっかり、オレらが改革するけどね」
シフェルやレイル、リアムも賛同してくれた。宰相のウルスラはしばらく考えていた。慎重に意見を出す立場だし、当然だと思ったので待っていたら「反対ではない」と苦笑いされる。どうやら傭兵の地位を向上した場合の、多方面から押し寄せる苦情の処理を想像したらしい。
英雄の肩書で黙らせられないの? そう告げると、彼女は笑って「利用させてもらう」と請け負った。おかげで中央の国での傭兵の扱いは、かなり良くなると思う。傭兵予備軍の孤児も、今後は孤児院で文字を学んで仕事の幅を広げるだろう。
オレが出来る改革は、その程度だ。あとはこの世界の人間がやることだった。あまり異世界知識に頼る癖をつけると、また異世界人を捕らえて利益を独占しようとする馬鹿が発生する可能性がある。オレみたいにチート貰えてればいいけど、そうじゃない異世界人が来たら悲惨な未来が確定だ。
「ボス、テントだ」
「ありがとう。ひぃ、ふぅ、みぃ……全部で6つ?」
「いや、あと2つある」
届けられた6セットを収納してからメモ用紙の数を修正した。この辺は改良したい。入れた中身を自動筆記してくれる道具や技術がないか、探さないと。
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