194.ドラゴン襲撃(2)
「興奮しちゃうのかよ、オレの血だぞ」
麻薬成分でも入ってるのか? 首をかしげると、ヒジリが何でもないことのように教えてくれた。そういう大切な話は契約した時か、契約前に教える物だと思うけどね。オレに関することなのに、後から知ることが多すぎた。
『主殿の血と魔力は、我らの封印を解いて活性化させるゆえ……マロンも喜んだであろう』
「封印を解いて、活性化……」
やっぱ麻薬扱いじゃん。何それ、怖い。
『文字通りだよ。僕らの力は普段封印されてるんだ。契約者はストッパーで解放者で、ついでに餌なの』
『我は主殿を餌などと思ったことはないぞ!!』
しょっちゅう噛まれてるけどね。餌扱いはしてないと……それ以前の問題として、やっぱり契約の時に説明すべき重要事項だぞ。
「聖獣の契約者がよく噛まれるのも、それを羨む王侯貴族が多いのも、魔力や血を得るための手段を勘違いした結果か」
リアムが羨ましいというから噛ませたけど、彼女は契約者じゃないから、ヒジリに力を与えることはなかった。つまりオレをよく噛むヒジリが一番能力を解放してる。合ってるよな?
「そういう意味があったのか」
「ボスの趣味だと思ってたぜ」
好き勝手言う傭兵を手で追い払い、戻ってきたコウコとスノーを見つめる。確かに彼らも最近は能力が高くなったし、強くなってる気がした。それはオレの血や魔力を近くで回収しているから、だとすれば。
「一緒にいる時間が長い聖獣ほど、強いって解釈は正しいの?」
『およそ合ってる』
ヒジリがヒゲをぴくぴくさせながら、肯定した。聖獣を解放するのは契約者の血や魔力で、それを得るために契約する。でも滅多に契約しないってことは、相性のいい魔力や血でなければ役立たないのかも。この辺は彼らも本能で選んでそうだから、説明を求めても仕方ないか。
「あれ? 聖獣に噛まれるのは名誉だって言ってなかった?」
ヒジリがよく口にしてた言葉だ。リアムを噛むように頼んだ時も、そんなこと言ってただろ。魔力の供給だなんて聞いてない。
『名誉であるぞ。何しろ契約者の証明ゆえ』
「あ、そう言う意味」
聖獣と契約することが名誉で、噛まれるのは契約者だという意味になる。イコールで結ぶ「聖獣と契約」「噛む」「名誉」が並んだ状態で、話を省略した結果が、ヒジリの説明だったのだろう。
ぐるりと4匹の聖獣を見回し、納得した。全員、オレと契約してから新しい力を見せてる。
出会った頃のヒジリは治癒をすぐに使わなかった。でもオレと契約した後は治癒してたよな。ブラウもただの猫として転がり込んで、契約してから風の刃を操った気がする。コウコと戦った頃も、爪と半々で使ってたのに今は爪をほとんど使わず、風の刃のみだ。
コウコは操られて暴走してた後で契約したから、炎を吐くのは最初からだ。でも最近のブレスは勢いが強くなった。スノーは契約者のない封印された状態で食べられたから、オレがドラゴンに喰われた時の血を飲んで復活した。そう考えると、契約の意味がうっすらと見えてきた。
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