241.東の国を占拠せよ(4)
2階に服あるの? あっそう……じゃあ、作らなくていいかな。うん。
微妙な空気にライアンが溜め息をつく。片手を腰に当てた見事な姿勢で、ダメ出しをされた。
「キヨが2階を担当したはずだが?」
何を探してたんだ。そう詰問する響きに、オレは自信満々で言い返した。
「そうだよ。奴隷探してたんだもん」
オレが探したのは人であって、服じゃない。だからクローゼットの中も覗いたけど、人がいない時点で頭の中から消去されたわけ。堂々と言い訳すると、レイルが笑い出した。
「おまっ……それ、言い訳っ、ちょ……む、り」
笑いすぎて言葉が途切れ途切れに聞こえる。呼吸にも苦労するほど大笑いした。楽しそうで何よりだ。レイルを放置して、2階に上った。
見つけた服を片っ端から袋に放り込む。それを収納へ投げ込み、また新しい服を漁った。ちなみに女性物の下着に関しては、コウコにお願いした。このメンバーの欠点は女性がいないことだ。女性の心を持つコウコなら、性別不明だし問題ないだろう……爬虫類だけど。
女性達には「聖獣様が用意してくれた」と説明することにした。嘘をつかずに一番収まりのいい説明だったのだ。男物のパンツも袋にいっぱい確保し、靴下や革靴、ハイヒールも全部確保する。何を着たいか選ばせてやりたいし、サイズが分からないのが大きい。子供もいたから、近くにあった子供部屋も漁った。
大量の荷物を全部収納空間にお任せし、手ぶらで階段を降り始める。あれだ、映画で出てくるお屋敷にある螺旋階段――お姫様がパーティーで着飾って降りてくるやつ。意外と歩きにくいという欠点を見つけた。
足を踏み外さないよう降りて、固まる。女性達は現在入浴中だ。でもって収納の出口はオレが握ってる。男性が服や下着を運ぶわけにいかない、よな?
「どうやって運ぼう」
「キヨが持っていくしかないだろ」
あっさりとライアンが言い切った。後ろでノアも頷いている。見ると、レイルも「腹筋が痛い」と文句を言いながら同意した。
「持ってけ」
「オレ、男だぞ」
「だが俺が持ってく方が問題だろ」
ライアンに言い切られ、頭の中で考えてみる。女湯に入れる年齢って、今何歳まで? オレ、見た目12歳だけどいける?
「……女湯に入ったことがリアムにバレるのが怖い」
絶対にレイルが売りそう。ちょっと金貨積まれたら喋るじゃん。でもってオレは必死に言い訳する羽目になる。何も悪いことしてないのに。そんな未来嫌だ。
「そうだ! 聖獣に運ばせるのはどうよ!」
いいアイディアを思いついた! そう叫んだオレに微妙な眼差しが返ってきた。え? ダメなのか。
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