241.東の国を占拠せよ(5)

「マロンは少女にもなれたと思うから、だめ?」


 整った顔を最大限に利用して可愛く尋ねてみる。あざとい所作は、某魔法少女の動きを参考にした。男に媚びた感じの可愛い少女を意識する。


『主って、恥を知らないよね。手段を選ばないっていうか、僕は呆れるよ』


「安心しろ、ブラウには任せないから」


 こいつは変態の部類に入るから、女性風呂は出禁だ。当然だろう。そういうと、なぜか腹を見せて転がった。


『僕、たくさん運んでみせるよ』


「いらない」


 即答で切り捨てた。やっぱり危険な奴だった。


『ご主人様、僕……恥ずかしい』


「恥ずかしくてもマロンしか頼れないんだよ」


 そんな甘い言葉で懐柔を試みる。照れた顔を両手で包んで、マロンは体を揺すって悶えた。なんだろう、オレの小型版だからかな。微妙な気分になる。素直に可愛いと言いづらいんだが?


『もう! あたくしが行くわよ』


 結局コウコが名乗り出た。心は乙女なので、問題ないだろう。ところで聖獣に性別はないと聞いてたが、どう見てもコウコ以外はオスの反応を示してる。ここら辺の疑問は素直にヒジリに尋ねてみた。


「なあ、聖獣って性別ないのに、どうしてオスとメスが分かれた反応なんだ?」


『基本は主人に寄り添うことを選ぶゆえ、主殿がオスなら我もオスを選ぶ』


 コウコは自己主張の強い変わり種ってこと? あ、でもヒジリが女言葉なの想像しづらい。オレが女だったら、ヒジリはオスを選んでコウコみたいな立場だったかもね。


「わかった。ありがと」


 ヒジリが嬉しそうに喉を鳴らす。主人の役に立つのが幸せってのは本当らしい。いつも何かと自分を売り込むもんなぁ。ごろごろ鳴る喉を撫でてやり、肩に飛び乗ったスノーに頬擦りした。


「悪いけどコウコ、頼むな」


『この中ではあたくししか出来ないものね』


 ふふんと鼻を高く上げて赤い舌を見せる彼女の前に、大きな包みを3つ置いた。出来るだけ風呂の脱衣所の近くで出してみたが……まさか引きずってくのか?


 荷物がふわりと浮いた!? マジックみたいだ。ほらあの、手品で人が空中に浮く感じ。ふわふわと頼りない動きだが、コウコの後を追って荷物がついていく。そのまま中に入っていった。


 尻尾の先まで入ったのを確認して、ひとまず扉を閉める。覗きはいけない!


「今の、何だったの?」


『ふむ、赤龍も考えたものよ。あれの龍体が浮く原理と同じ、温度差を利用しておる』


 ごめんなさい。理科は苦手でした。えっと……温度差で浮くもので思いつくのは、熱気球くらいだ。

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