232.梅干しは毒じゃない(2)
「ちょっと外すぜ」
「うん? いいけど。ついでに奴隷使ってる家の情報売ってよ」
「報告書の形でリストアップするから、半日くれ」
ひらりと手を振ってレイルが離脱した。そういや、あいつに頼まれた探し人も見つけないとマズイ。約束だし。
考え事をしながらも、門からジャックの実家までの道すがら、土産物を物色した。買ったものはベルナルドにもたせる。口紅、頬紅、白粉、これは何だ?
奇妙な形のハサミに似た道具も購入し、続いて隣の商店で食料品を漁る。調味料系は外せない。梅干しに似た食材を見つけ、大喜びで甕ごと購入を決めた。驚きに目を瞠る店主の前で、収納へ放り込んで金貨で支払う。
次の入荷も同量の購入するからと予約も入れさせてもらった。味見した梅がカツオ梅だったのは愛嬌、とにかく美味しい。後ろで味見したベルナルドが悶えていたのも面白かった。
「我が君、毒ではありませんか?」
「失礼だな、これは梅干しだぞ。消化にいい薬みたいな食べ物だ」
店主が大きく頷いた後、オレの手を取って感激と感謝を繰り返す。そうだろう、理解されにくいよな。これは外国人に理解されない梅干しを、互いに「うまいじゃんか」と慰め合う日本人の図に近い。
カツオが入ってるから、味もまろやかだぞ? お婆ちゃんの梅なんか、素材の味を生かした塩オンリーだ。ちゃんと赤く色づいてて、カツオの間に紫蘇も……あれ? これって、東の国は鰹節があるって意味で、ファイナルアンサー?!
「て、店主。カツオ、削った鰹節ある?」
「それなら隣の店で扱ってる。余ったのを譲り受けて梅に入れたんだ」
「ありがとう!!」
ここでオレは当初の目的を忘れて、鰹節をゲットした。そりゃもう、鰹漁船かってくらい狩った、じゃなくて買った。山ほど積まれた鰹節を、専用の削り器ごと譲り受ける。そうそう、このカンナがついた箱で削るんだよ。
「カビが……生えてますぞ?」
思わず大声で注意しそうになり、慌てて店主達の目を気にして声を顰めたベルナルドだが、すでに遅く睨まれていた。
「何言ってんだ、これがいいんだ。仕組みは忘れたけど、このカビが旨みを増して……涎でそう」
「我が君はゲテモノ好きでしたか」
肩を落とすベルナルドに衝撃の事実を突きつける。
「何をいう。それなら中央で食ってるチーズも、カビだらけだぞ」
にやにやしながら告げると、ベルナルドは知っていたらしい。顔を上げて反論した。
「あれは、チーズを熟成させるのに必要なっ!」
「じゃあ同じじゃん」
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