78.オカラはやがてハンバーグになる(1)

 結局、深夜までかかってオカラを加工した。鍋の残りは傭兵が捕虜に分けていたので、完全に任せる。指揮官って本来こうやって部下を使う職業だと思うわけ。なのに、オレが最初にテントとベッド用意してやって、料理当番なのはおかしい。


 ほとんど言いがかりに近い感情で八つ当たりした鶏肉は、見事なミンチになりました。力いっぱい魔力でかき回したら潰れて、飛び散りそうになった肉を風で浮かせて戻したので、ロスもほぼゼロ! 完璧な魔法チート料理教室だった。


 あまりの剣幕に、遠巻きにした傭兵達はひそひそ話を始める。


「ボスはよほど『豆腐好き』なんだな」


「『ひやっこ』って何だ?」


「しらねぇよ」


「結局、豆腐の何が気に入らなくて絞ったんだ?」


「「「「さあ?」」」」


 冷奴の名を叫びながら絶望していた姿が、彼らには印象的だったらしい。


 寝るようにと言われテント前に連れてこられても、オレは無心にハンバーグを丸めていた。楕円形だ、俵型にして潰して真ん中をくぼませる。タレントが作っていた小判型ハンバーグを、机の上に量産した。


 鍋の中に大量にあったオカラとひき肉を混ぜたタネがようやく終わり、大量のハンバーグもどきを前に達成感を覚えた。なんかすごい満足した。でも冷奴食べたかったけど……溜め息をついて肩を落とす。


 砂漠ほどじゃないが、荒野に近い森の草原も夜は冷える。ぞくっと背筋に寒さが走って、洗った手で両肩を抱いた。濡れた手は余計に寒い。


「夜だぞ、キヨ。明日も歩くんだから寝ろよ」


 ジャックが心配して声を掛けに来た。眠いのと、泣き疲れて目が痛い。目の周りが赤く腫れているし、考えがふわふわして纏まらなかった。ひょいっと首根っこを掴まれて、猫の子のようにベッドの上に置かれる。


「ぐえっ」


「悪い、首がしまったか?」


 くつくつ喉の奥を震わせて笑うレイルだが、さほど悪いことをしたと思っていないようだ。しかもノアやジャックも心配そうにオレを覗き込んでいる。ライアンに至っては、ベッドの上のオレを押し倒してタオルケットをかけていた。


 どれだけ子ども扱いなのさ。


「子供は夜は寝るものだ」


 サシャが言い聞かせて目元を手で覆ってしまった。ここまでして寝かそうとするんだから、よほどオレの状態は酷いんだろう。目を閉じると他の感覚が鋭くなる。探るつもりはなかったが、魔力感知でテントの周りをうろつく大量の傭兵に気づいた。


 ……冷奴くらいで怒って機嫌損ねて、こんなに心配させるなんて。


 すごく悪いことをした気がする反面、心配されて嬉しいのも事実。あれこれ考えている間に、すっと意識が吸い込まれるように途切れた。


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