231.奴隷解放は異世界人の夢ですから(3)

 子供達は不思議そうに手を眺めたり、自分の臭いを嗅いだあと……大きく頷く。ぱちんと指を鳴らして彼らの足枷を壊した。


「これでよし。奴隷を開放するのは異世界人のマナーで夢だからな」


 街につくまで繋いでおけば行方不明にならないが、気分的に嫌だ。ラノベでも購入した奴隷に優しくしてやってハーレム築いたり、拾った奴隷の首輪を壊してた。そもそも奴隷がいない世界から来た異世界人としては、開放がデフォだろ。


「いいのか? お前に所有権あるぞ」


「そんな権利は放棄する」


 奴隷いらないから。ハーレム築く気もなければ、連れ歩いて仲間にする予定もない。孤児院で普通に孤児として生きて行ってくれ。そんなオレの斜め後ろで、ベルナルドが唸った。


「ですが、キヨ様。元奴隷が一人では生きていけますまい。保護するなら孤児院につくまで所有権を一時保持し、食事や宿の面倒を見てやる必要がありますぞ」


「ああ、なるほど……うん」


 納得しながら振り返り、余った汁物をちゃっかりおたまで食べたベルナルドに顔がひきつる。髭についてるぞ、スープの具が……。バレてないと思ってるのか、きりっとしてるけど、食ったよな?


 指摘しようとしたオレに、笑いをこらえるレイルが首を横に振った。腹筋の限界にチャレンジ中みたいだが、いっそ声に出して笑え。喉が引き攣って窒息しそうで危険だ。


「中央に帰るまで、オレの奴隷にしといて」


 余計なことは言わない、見ない、聞こえない。貝のように口を噤んで、子供達にソリを指さした。


「あれに乗っていこう」


「「「はい、ご主人様」」」


 聖獣の誰かさんと被ってるが、まあいい。呼び方はどうでもいいが、なぜ君達がトナカイ役なんだ? ソリの紐はマロンが引いてくれるんだが。


 言葉が通じてるのに通訳って必要なんだな。空を仰いでしまったが、食器の片付けやら鍋の回収をするレイルは忙しそうだし、聖獣が話しかけたら怖いだろうし、ベルナルドは当てにならん。ここはジャックお兄ちゃんの出番だ!


「ジャック、説明してあげて」


「おうよ。お前らはこの上に乗るんだ。ちゃんと魔法で運んでやるよ」


「え?」


「ええ? 違うのか」


 微妙な食い違いがあるが、方向性は合ってる。どうしたものか考えたが、どうせ余ってる魔力なので使うことにした。


「いいよ。それで」


 こうしてマロンのトナカイ化計画は方向転換し、オレがトナカイになることで一件落着。ヒジリが慣れた様子でかまどを土に戻した。準備は出来た。


「王族もオマケも回収したから帰るぞ」


「「おう」」


「はい」


 元気一杯の声が返り、マロンに乗ったオレは魔力垂れ流しで子供達と一足早く街に帰還した。

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