238.エフェクトないと地味ぃ(1)
黄金の光が周囲を満たし、エリアヒールが発動……とはならなかった。地味に傷だけ消える。盛り上がった気分が一瞬でスンと落ちた。
「地味だ。エフェクト欲しい」
『主様、治ってますよ』
治ったけどさ、火傷部分の無駄毛まで再生するくらい完璧な治療だった。期待したオレの盛り上がりを返してくれ。ラノベやアニメで出てきた、あのキラキラエフェクトが見たかった。
『主、エフェクト込みでイメージしたら?』
振り返ったオレの尻の向こう側で、青猫が地面から生えていた。上半身を出して、地面の縁に前足を乗せる。それを上からヒジリが踏んだ。なんだかシュールなSM風景だが。
「なるほどね、エフェクト込み」
それは盲点だった。オレの魔法はイメージ重視、つまりエフェクトがないと治療じゃないよとイメージしたら……エフェクト出るんじゃね? 次の獲物を探してきょろきょろする。少し離れた場所にいた女性に歩み寄ろうとしたら、後ろからズボン引っ張られた。
「うわっ」
『きゃぁ、主人ったら』
『ご主人様がぁあああ!』
ずるっと膝まで下がったズボンがオレの足を拘束し、前にこけた。飛び出したマロンが下敷きになってくれたので、美少年の顔は守られる。が……下半身の秘密は公開されてしまった。下着が一緒に引きずられたので、ぽろんとこぼれてしまったオレのオレ様――。
「いてぇ」
反射的に手をついたので、マロンを壁ドンならぬ土ドンした。顔を赤くして照れるマロンをオレが襲った図みたくなったけど。いきなりズボンが脱げた原因を振り返ると、申し訳なさそうなおじいさんがいた。
「わ、悪い。じゃなくて、ごめんなさい」
怯える奴隷の老人を睨みつけたが、これは虐めじゃないぞ。くそ、オレのオレ様はリアムだけが知ってればいいのに。慌てて下着を引き上げ、ズボンも持ち上げる。マロンの隣に転がってズボンを履くオレの姿に、ジャック達が腹を抱えて大笑いだった。
覚えてろよっ!
『主殿、情けない姿をさらすでない』
「したくて晒したんじゃねえっての」
ぶつぶつ文句を言いながら起き上がると、奴隷の老人は平伏している。
「助けていただき、傷も治していただきました。ありがとうございます」
うん、お礼が言いたかったのか。出来たら次からズボンを引っ張って引き留めず、声でお願いしたい。そうじゃないと同様の被害者が出る。しっかりしまって、念のためにサスペンダーも取り出して装着した。よし、二度とぽろんしないからな。
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