238.エフェクトないと地味ぃ(2)

『主ぃ、はやくぅ。僕、エフェクトみたい。アニメみたいにするんでしょ?』


 そこはエロ同人誌のような気もするが、まあいい。美少女戦士系のアニメみたいにしてやんよ。ぐっと気合を入れ直し、別の奴隷の前に座る。突然近づいて視線を合わせたと思ったら地面に座るオレを、不審そうに見つめる青年は両手首の先が欠損していた。


 事故なのか、なんらかの仕置きの結果か。どっちにしろ、生えろと願うしかない。


「いくぞ! 名付けてだ」


『主のネーミングセンスひどい』


「ブラウ、名前を変えてみるか?」


 よくも言ってくれたじゃねえか。違う名前にしてやろうか? めちゃくちゃダサい名前を考えてやるよ、何しろオレが主君だからな。にやっと笑えば、青猫は後ずさった。


『ぼ、僕……主のこと大好きだよ?』


 語尾が疑問形なのが気に食わんが、今回は許してやろう。放置してしまった奴隷の青年に治癒を掛ける。きらっきらのエフェクトつけて、美少女戦士の変身シーンさながらの豪華な光景!


「うっわぁ」


「こりゃひどい」


 サシャとライアンの声が聞こえ、ノアが思わし気に空咳をした。


『僕の思ってたのと違うん~』


 語尾が悩ましいことになった青猫の言葉は、そっくりオレの本音だった。


「何か、途中でミスったみたい」


 えへっと舌を出してあざとさを前面にだして誤魔化す。眩しいエフェクトはあった。ここまで問題なかったのに、イメージが具体的過ぎて、奴隷青年の衣装が美少女系コスチュームになる。これはまずい。ついでに手首の先も復活したが、なぜか獣風の手になった。


 あれだ。オレの性癖にどんぴしゃのマイナー美少女系アニメが、ケモノ耳や尻尾付きの獣人の姿に変身し、あまつさえ手袋が肉球付きの毛皮タイプだった。それを思い浮かべたオレの魔法は、そっくり再現したらしい。


 リアムならともかく、成人した奴隷青年に似合うとは思えない。呼吸困難に陥るほど笑うジャックは、ついに苦しさから芝の上を転がり始めた。息が止まる前にだれか助けてやれよ?


「落ち着け、キヨ。手は戻ったんだ。問題は毛皮の下だ」


「わ、わかってる」


 驚いた顔で自分の格好を確かめている青年に、恐る恐る声をかけた。


「えっと、手首の先が生えてるか確認したいんだけど……触ってもいい?」


 驚いた顔でじっと凝視した後、青年は頷いた。


「あ、ああ……あんた、こんな少数民族の言葉がわかるのか?」


「少数民族の言葉?」


 大きく首をかしげると、ノアが真っ赤な顔で説明してくれた。後ろで腹筋の限界まで笑いを堪えていたが、表情筋で立て直したらしい。この辺はまだ復活できないジャックより役立つ。


「どうやら獣人の血を引く民族のようだぞ」

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