24.カミサマって仕事してたんだ…(2)

 死んだ者の魔力は再びこごって、生まれた存在に吸収されていく。そのため飽和状態になることは少ないようだが、稀に大きな魔力を持つ者が死んだりすると、聖獣に回収される。大量に回収した魔力を、異世界人であるオレに注いじゃうあたり、カミサマも大雑把なことを………………まてよ?


 分厚い本を読み進める中で嫌な仮定が浮かんだ。


「あのさ、異世界人が多いって聞いたけど」


 確か、最初の頃にジャックがそんなことを言っていた。異世界から来たといったオレに対して「この世界は他の世界から来る奴が時々いる」と説明したのだ。あの後『異世界人の心得』という本を見せてもらったから、疑うこともしなかったが。


「ああ、多いぞ」


 あっさり肯定するリアムは、優雅に紅茶を口元に運ぶ。カップの縁に触れる唇が柔らかそう……じゃなかった。彼の言葉で確信を深めた。


「ヒジリ達が魔力を捨てる先って、異世界人じゃないか?」


「…………可能性は高いな」


『魂段階で区別はつかないが、可能性はある』


 だよな? この世界の人間や魔獣の魂事情は知らないけど、いきなり大量に注いだら壊れるだろ。外の世界からくる存在をゴミ箱扱いして注いでるよな。どうせ作り直す身体なら大丈夫だろ、的な安易な考えで!


 ぎくっと顔を引きつらせるカミサマの姿が見えた気がする。この予想は99%くらい当たってると思う。新しい身体に魂を入れる際、一緒に大量の魔力を与えれば生き残る確率があがるし、異世界の知識を使って出来ることも増えるはずだった。つまり、世界の定期的な改革を異世界人に丸投げ外注してるわけだ。


 なにそれ、狡い。


 オレなんて、この世界に来て頭吹き飛ばされかけたり、銃で撃たれたり、毒のナイフで切られたり、誘拐されて、死に掛けたりして、硬い干し肉我慢したりしてるのに。


 ぎりぎり歯を軋ませて怒りを露にするオレに、ちょっと引き気味のリアムとヒジリが顔を見合わせていた。深呼吸して気分を落ち着けて、温い紅茶をとりあえず流し込む。空になったカップに侍女が新しい紅茶を注いでくれた。


「ノアが持ってた『異世界人の心得』もう一回読もうかな」


 以前はさらりと読み流してしまった。しかもその都度必要な部分だけを読んだので、全体を把握できていない。反省を込めた呟きに、リアムが蒼い目を輝かせた。


「それならば、お前に1冊やろう」


 積み重ねた中に、背表紙の色が違うが同じタイトルの本があった。無造作に引き出したリアムが差し出してくる。受け取ろうとして手を止めると、何か納得した様子でリアムが本を手元に引き寄せた。


「贈答品ならリボンをかけなければ」

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