17.教育は情熱だ!!(2)

「庇っても一緒。リアムに聞いたけど、仕返しに走ったらしいじゃん」


 リアムが言うには、異世界人であるオレについた国家予算から彼らを雇ったらしい。つまり彼らが何か仕出かせば、責任はオレに返るわけだ。


 彼らが自由な傭兵だとしても、軍に雇われて所属した以上、上下関係を無視していいわけがない。


「だって、おまえの背中!」


「あんなになるまで子供を痛めつけるなんて」


 ライアンとジャックの言葉を「ストップ」と手を挙げて遮る。


「まず、オレは子供じゃないぞ。24歳になった。背中についてはいろいろ意見があるだろうが、お前らが動くのは筋違いだ。許せなければ、オレ自身が仕返しする」


「すまん」


 とっさに謝ってしまったノアは、どうやら彼らを止めようとして止めきれなかったらしい。項垂れた彼の肩をぽんと叩いた。


「オレが上官だろ? じゃあ、素直に謝って引いてくれ」


 傭兵として一流の彼らが本気でシフェルとやり合ったら、水をかぶるくらいの被害じゃ済まない。


 このあたり一帯が火の海になってたり、銃撃戦になってないから、ちょっと嫌がらせする程度の感覚だったのだろう。


「申し訳ない」


「ごめん」


 口々に謝罪する彼らを見回し、サシャの姿がないことに気づいた。


「あれ? サシャは??」


 その言葉にジャックが青ざめた。なんか……聞かなければ良かった系の嫌な予感がビシバシします。


 聞きたくない、聞きたくないけど無視も出来ない。


「えっと……?」


「外で火矢の準備してる」


 火矢。文字通り火がついた矢のことだよな? 準備してるってことは。


「竜は火に強いから、多少脅かしても平気だと思ったんだよ」


 頭を抱えるジャックの呟きに、オレは溜め息を吐いた。


 冗談だろ。なんだ、その危険な発想。人間に火をつけたら耐性がどうの、って問題じゃ……?


「もしかして」


 そこで嫌すぎる作戦を思いついてしまい、言葉を切る。


「あなたが想像した作戦を説明してください。今日の復習にちょうどいい」


 しっかり追い詰めにかかるシフェルに頷き、予想外に子供っぽい作戦を口にした。


「火矢の準備、水びたしの室内、シフェルが竜で、火に耐性がある」


 指折りしながら、ヒントを上げていく。興味深そうに腕を組んで待つシフェルが、タオルで髪を丁寧に拭くクリスに肩を竦めた。


 彼らはとうに気づいていたらしい。


「ジャック達は囮で、シフェルに可燃性の液体をかける。外に飛び出した彼に火矢を射かける。多少の火傷はするけど、シフェルは竜で火に耐性があるから大きなケガはしない。仕返し終了、かな」

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