37.便利で危険な大量収納(2)
けろりとシフェルが肯定した。地図の上部にある三角のマークを押すと、中央の国の真ん中ら辺に赤いマークが点灯する。
「もう一度押すと消えます。授業で言いましたよね?」
「ソ、ソウデシタネ」
聞いたか覚えてないが、シフェルが言ったというなら教えたのだろう。噴き出す冷や汗を拭いながら笑顔で応じておく。
誤魔化すために、収納したリストを脳裏に思い浮かべる。
「ライフルを預ったから、確かライアンのが2本……2丁って数えるのか? 自分用と予備、サシャの半月刀もあるし、あっ! これこれ」
手に余るサイズの銃を引っ張り出す。将来手が大きくなったら使うつもりで仕舞いこんでいた。レイルに強請ったらくれたんだよ、アイツ結構優しいかも。リボルバーは珍しいのか、シフェルが拾い上げて刻印を読んでいる。
「この銃、かなり年代物ですよ? 誰が……」
「レイル」
シフェルの疑問に即答した。ほかに誰がオレに武器を与えるんだ? 基本的に傭兵連中や教官役としか接点がないんだから。残りはかなり少なくなったが、何か忘れてる気がして……のどの奥に魚の骨がひっかかったときの、あの違和感がある。
「こんなもんかな? 銃弾も出たし……危険なものは終わったと思うんだよ」
まだ小骨の違和感が頭を過ぎるが、仕方ないので、残りは袋をひっくり返すことにした。
「あと自爆呪文だから、あっちでやる」
すこし離れた場所に歩いていくと、後ろをリアムがついてきた。当然だが近衛であるシフェルもついてくる。振り返ったオレは溜め息をついた。
「あのね、リアム。ひっくり返したときに何が出るか分からないから、すこし離れててくれる?」
「でも……」
拗ねたような顔をされると、すごく抱き締めたくなるんですけど? 何コレ、番になった弊害とかあるんですか!? シフェルに目で尋ねるが、意図が伝わらなかったらしく首を傾げられた。
「本当に危険だから、あの荷物のあたりにいて」
大量に山積みの荷物を指差して、それからリアムに近づいた。そっと手を伸ばして黒髪を引き寄せる。そのまま毛先にキスを落とすと、リアムの頬が笑み崩れた。
「ね、お願い」
重ねて頼むと、ようやく納得したリアムがシフェルを伴って離れる。一息ついて、自爆呪文を唱えた。確か両手を上に掲げて……
『空にな~れ』
どさっ、どさどさ!
想像よりずっしりした音がして、最後にガシャンと金属音がした。幸いこちらへ倒れてくるような物は残っていなかったらしい。
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