15.訓練は、三途の川原でした(4)

 1つ目の武器GET!


 腰のベルトにナイフを引っ掛ける。出来るなら飛び道具が欲しい。銃を探して視線をさまよわせるが、この建物の構造を知らないので、走りながら階段を見つけて駆け下りた。


 武器や弾薬を隠すのは地下と昔から決まってる、たぶん。小説も映画も漫画だって、すべて地下室に保管していた。


 頼りない知識で地下の扉を開いて転がり込んだ。幸いにして銃も銃弾も沢山並んでいる。安堵の息をついて伸ばした手の先で、銃が暴発した。


 違う、狙撃だ。


「ちっ」


 派手に舌打ちして右手をかざす。青白い光が文字か文様の形でバリアのように広がり、飛び散る破片を防いだ。残った銃を掴んで棚の裏側に飛び込んだ。狙撃された方角からして、ここは死角の筈。


 乱れた呼吸を整えながら、緊張からか震える指で銃弾をセットする。髪が首筋に触るのが気になり、シャツの袖を細く裂いて紐を作った。ひとつに結わえた髪を背に放り、大きく息を吐き出す。


 よしっ!


 気合を入れて飛び出す。物陰に隠れていてやり過ごせるほど、ジャックやシフェル達は甘くないだろう。オレの予想を裏付けるように、銃弾が周囲の家具や壁に当たる音が聞こえた。だが銃声はない。


 この世界、サイレンサーが普通なのか?


 首を傾げかけ、訓練をかねて音で方角を判断させないつもりだと気付く。最初の戦場では、砲弾の爆発音で耳が役に立たなかった。きっと実戦方式の訓練なら、耳に頼らず気配や感覚、本能で敵を見つけないと生き残れない。


 理屈はわかる、わかるが……


「やりすぎだろっ!」


 しょぱなからハード過ぎだ!! 文句を目いっぱい込めた引き金を引いた。


 パン! 派手な銃声に驚いて足を止め、手の中の銃を睨みつける。音がする……これじゃ――オレだけ、居場所バレバレじゃねえか。


 じっと銃を見つめ、映画で見た知識を思い出す。たしか、アクション映画で悪役がクッション越しに銃を撃ったら、銃声が抑えられた……よな?


 きょろきょろしても、武器が置いてある地下室にクッションがあるわけもなく。


「あれ?」


 思わず声が漏れた。


 なんで地下室なのに狙撃されてるんだ? 左上の方角だよな。さきほど銃弾が飛んできた方角を確認するために、少しだけ顔を覗かせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る