249.王都で嘔吐祭り(2)

「……ふむ、王族の復活は諦めた方がよいかのぉ」


 アーサー爺さんとしては、東の国の王族に怒り心頭だった仲間に、一矢報いさせてやりたいんだと思う。でもね、あれは臭い。


「殺し直すだけならやめようぜ。マジ臭い」


 可哀想じゃん! 生き返らせるオレが! 主にオレが!!


『主ぃ、本音と建前が逆』


 おっといけない。本音をゲロっちまった。


「間違えた。まじ臭いじゃなくて、可哀想だろ? 人道的にどうかと思うぞ。生き返らせるオレの身にもなってみろ、何回アレを蘇らせるんだよ」


 徐々に腐っていく死体。間違いなく飯が食えなくなる。痩せ細る美少年――ほら、可哀想だろう? 全力で訴えた結果。このまま地下牢に埋めることになった。


 殺しに駆けつけた人が、倒した瞬間に死体が腐乱したらトラウマになるからな。


『ほとんどの人がPTAになっちゃう』


「それを言うなら、PTSDだろ」


 誰がPTAだ。中途半端に合ってるから頷くところだった。青猫の尻を蹴りながらボケに突っ込む。ブラウとオレの会話は、ジャック達にスルーされた。意味わからない単語で盛り上がるんで、放置が基本らしい。


「このまま埋めるよ」


「……そうじゃの。それも罰だろうて」


 誰も弔う人なく、見送りもなく埋められる。王族なら立派な墓所があるんだろうけど、そこへ運んでやるほど善行積む気にならんわ。


「へい、ヒジリ。ちょっと埋めてきておくれ」


 タクシーを止めるノリで頼んだが、嫌そうな顔をされた。眉間どころか鼻に本気の皺が寄ってる。


『主殿、あれらは蘇るかも知れぬ』


「いや、だから埋めるんでしょ」


『先に燃やして浄化しましょうよ』


 コウコが自ら申し出た。よくわからんが、きちんと埋葬しないと化けてでるぞ! の感覚であってる? この世界にも幽霊いるの。神様の存在知らないのに。仏様も多分ないよな。


 唸りながら考えるのを一時中断した。まだ人生長いし、いずれ判明するさ。


「任せる!」


 そして死体処理は丸投げ。吸血鬼やゾンビ、幽霊、スケルトン。どの形か知らない以上、蘇り防止の方法は君達に一任するのが賢い指揮官だ。


「おっといけない。帰らなきゃ」


 空を見上げて時間をはかり、そろそろ食事の準備だと呟く。遅れるとレイルに文句言われるし、奴隷達が可哀想だし。あ、今度はきちんと仕事を割り振ってやらないといけないな。


「急ぎか?」


「うん。ご飯作らないとね」


 無言になったジャック班の連中に手を振り、オレは大急ぎで飛んだ。転移って魔力が大量消費されるんだよ。だから腹が減る。食べた物吐いたから空腹だけど……これから飯を作るんだけどさ。


 思い出し嘔吐は避けないといかん。

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