197.夜営なら森だろ(3)
「南の兵との間に結界張ってやろうか? 心配なんだろ」
お前らのためだと笑って許した。だってオレが逆の立場なら、やっぱり心配するし疑う。いきなり銃弾飛んできても面倒くさいし。
『主様、あのドラゴンはどうします? 使わないなら殺しちゃいますけど』
スノー、お前可愛い顔で怖いこと言うな。捕まえておいて逃すなと命じたのはオレだけど、賞金稼ぎの襲撃で忘れてた。
「ドラゴンの洗脳って、どうやるの?」
にっこり笑ったオレの質問に、スノーとコウコが顔を引きつらせる。ヒジリはそっと目を逸らし、ブラウは『主、こわぁい』と猫手でブリッコした。青猫をひとつ叩き、行方不明のマロンに気づく。
「マロンはどこ行った?」
『ドラゴンの見張りしてるわ』
コウコが気の毒そうに呟く。そういえば、アイツに任せたような、違うような……ぽりぽりと顳顬を掻いて誤魔化し、ドラゴンの話に戻した。
「それで、ドラゴンの洗脳だけど」
『主殿、多少なら操れると思うが……複雑な命令は無理だ』
「南の国の王都を襲撃させたい」
「「「「悪魔か!」」」」
「「「ひでぇ」」」
一斉に傭兵達に罵られた。お前ら、聞き耳立ててたな? 口々にそんなひどい作戦はやめろと言われたが、戦争だぞ。攻め込んで相手を直接撃ち殺すのとなにが違うんだよ。そう聞いたら、黙ってしまった。
「魔獣に襲わせるから酷いって? 違うだろ、オレらが颯爽と助けに入ってやるんだから」
にやりと笑って「正義の味方になれるぞ」と付け足したら、一瞬固まった後で彼らは声をあげた。
「悪魔より酷い」
「「「魔王か」」」
「「「正義の意味が違う」」」
解せぬ、そんなに罵られるようなことか? この世界のルールに首を傾げるのはこんな時だ。オレを魔獣が襲った理由は不明だが、偶然……そう必然が重なった上での偶然が王都を襲ったら、助けに入るオレらは正義の味方じゃん。
むっと唇を尖らせて腕を組むと、叫んでいた連中が徐々にトーンダウンしてきた。冷静になったところで、現実を突きつける。
「オレが味方を100人死なせたら無能者、敵を100人殺したら英雄。でも敵から見たら100人殺したオレは殺戮者だ――わかるか?」
見る角度が変われば、英雄も一夜で人殺しだ。どこかの漫画で読んだ例を噛み砕いて説明すると、ユハが苦笑いしながら指摘した。
「その例え、たぶん伝わらないよ」
傭兵はその場しのぎの仕事しかしない。英雄だの殺戮者の例えは分かりづらいようだ。カッコつけた分だけ、カッコ悪ぃ。
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※次回から更新時間を変更します
22:00 ⇒ 9:00
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