237.金色のタマネギの下で(2)

 ジャックの短い髪を掴んで馬代わりにしようとしたら、足元でマロンがぴょんぴょん跳ねた。


『ご主人様、僕に乗って、僕に!!』


 必死で叫ぶが、今のお前……少年姿だぞ? 乗ったら潰れるんだけどね。口にする前に、マロン自身が気づいたようで慌てて馬に戻った。足を踏み鳴らされ、苦笑いしたジャックに背中に乗せられる。甘やかした分だけ、我が侭になってきたなぁ。


「馬に乗って入ったら、ドアくぐれないんじゃ?」


 玄関で馬だけ通過してオレが後ろに落ちるコントは要らない。きりっと指摘したところ、無駄に大きな扉だから玄関は潜れると思う旨の答えがあった。ほんと、無駄遣いの建物だ。


「よし! 作戦はなしで奴隷解放と行こうぜ」


 一狩り行くテンションで号令をかけると、そこは孤児出身の傭兵ばかり。あっという間に散開して思い思いの場所から突入した。上の階はオレが担当するので、全員地下に向かってもらう。偉い人って高いところ好きだから、一般的に罪人や奴隷は地下室だろ。予想は大当たりだった。


「いたぞ」


 通信が入って、オレは上の階の確認を終えてからマロンと一緒に地下室へ向かう。ちなみにマロンは少年姿になってもらった。いくら差し押さえ中でも馬で屋内を歩くのは失礼かな? と考えた。この辺が間違いなく自分は日本人と認識する部分だ。


 王族もいなくなったので、この国の制度はがたがただ。この際だから建て直せばいい。王侯貴族を全員、国民の権限で解任する。そのうえで、有能な奴が貴族なり王族をやればいいだろ。この辺はアーサー爺さんが頑張ってくれれば、何とかなりそう。ジャック父は役立たずだから、名前すら覚える気がないけどね。


『ご主人様、また奴隷ですか?』


「うん。ひとまずご飯食べさせて、きれいな服着せて。暮らしていくのに必要なことを教える。無理そうならどこかで雇ってもらう手もあるからね」


 奴隷の子達と一緒にいて、独立させる手筈は整える。無理な子は命令されて仕事が出来る下働きや兵士なんかがいいかも。兵士は寮もあって食いっぱぐれない上、仕事は上官が命令してくれるから悩まない。うん、女の子ならメイドさんもいけるか。


 ある程度見通しをつけたところで外へ出て、金ピカで趣味の悪い屋根をじっくり眺めた。久しぶりに水筒持ったノアが近づいてくる。遠慮なく受け取って口をつけた。あ、これ紅茶だ。


「屋根を光らせてどうする気なんだ?」


「わかんないけど、目立ちたかったんじゃない?」


 オレに聞かれても、趣味の悪い悪党の心境なんざ知らんけど。悪い奴ってラノベやアニメの中でも、趣味悪い目立ち方を好む傾向があるよな。あれ、テンプレなのかも。

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