236.同情するなら止めてやれ(2)

『主人、スノーを止めて』


 何事かと振り向くと、リス状態に頬を膨らませ、妊婦並みの腹をした白蜥蜴? が転がっている。仕事を欲する子供達に孕まされ……じゃなかった、頬ぱんぱんにされたらしい。


「スノー、無理するな。みんなも仕事終わりだから、残ったの全部食べていいよ」


 好きにしなさいと言った途端、目を輝かせて頬に詰め込む。いや……食べていいと許可したんであって、頬袋は使わなくていいぞ。一番小さな子がハムスター状態になったのを見て、ベルナルドがそっと涙を拭う。


 同情するなら、止めてやれ――放置するな。ブラウは猫サイズだが、棚の上から降りてこない。食事も棚の上に運び込んだ様子。オレがいない間に耳か尻尾を掴まれたな、アイツ。


 ヒジリはその点大型肉食獣の姿を保ったままなので、子供達も怖くて近づかなかった。コウコに尋ねる視線を向けると、ちろちろと舌を出しながら答える。


『あたくしはベルナルドの筋肉に巻きついてたわ』


 ああ、うん。そっか……。筋肉フェチだもんな、コウコ。


「コウコ、ベルナルドと契約するか?」


『悪くないけど、契約と筋肉は別よ』


 ベルナルドの太い腕に絡んだままでは、説得力ないぞ。でも契約変更までは考えてないのか。ああ、いけね。王族の復活が終わるまで、コウコと契約継続しないとマズイんだっけ。


 ご飯を詰め込んだ子供達に、孤児院用に作らせたゲームを取り出す。いわゆるトランプだ。この世界用にマークを5種類の聖獣にした。カードは各種10枚ずつで、ジョーカー役のボスカードを入れて51枚。


 遊び方はババ抜き限定だ。奴隷だった子達の年齢差が大きい。誰でも簡単にできるよう、マークが同じならオッケーにした。なお、このババ抜きは種類が奇数のため、失敗すると一般札が余る。そうしたらドローでやり直し。


 傭兵と遊んだ時は、あっという間に終わってしまったが……まあ時間潰し出来ると思う。他の遊び方も考えて教えてくれと言ったら、目を丸くしていた。単純作業を命じられることはあっても、頼られたりお願いされた経験はないみたい。


 嬉しそうに頷いた子供達を全員撫でて、部屋に案内した。ジャックの祖父の屋敷の侍女達に、お菓子や飲み物を切らさないようお願いする。しばらくは満腹でも不安だろうから、いつでも食べ物が与えられる環境を作って安心させたい。そう口にしたら涙を浮かべて頷かれた。


 同情してくれてるなら、ひどい扱いはないだろう。安心して屋敷を抜けられる。


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