246.機嫌取りなら唐揚げだろ(2)
奴隷だった人が30人以上。鍋を掻き回す人と炒める人、食器の準備まで入れても仕事が10人分しかなかった。
「……仕事、仕事」
拝むようにして待っている元奴隷の仕事、か。ふと思いついて提案してみる。
「なあ、マッサージって出来るか?」
「はい、私はできます」
「したことありませんが、覚えます」
意欲的だな。経験者1人に未経験者2人をつけて、3人一組で傭兵達のマッサージを頼むことにした。言うなよ、わかってるさ。オレだって、これが苦肉の策だってことくらい。
ジークムンド達もずっと野営で疲れてるし、慰労を兼ねたマッサージはいいと思う。事実、おおむね好評だった。その間に杓文字を渡して鍋を管理してもらい、大急ぎで米を煮る。
炊いてから入れる時間が勿体無いので、いきなり生米から鍋に投入して粥にした。見慣れない食べ物に、傭兵達はドン引き……と思いきや、オレの奇抜な異世界料理に慣れた彼らは目を輝かせた。
見たことないが、うまいに違いない。勝手にハードルを上げないでくれ。作った粥に野菜と骨つき肉を入れる。食べる頃には肉が骨から剥がれるだろうし。
肉の大部分は唐揚げの予定だ。下味を醤油でつけて、少し迷ってハーブも添えた。匂いがいいと思うんだよね、相性とかわからんけど。
黒酢で揉んで柔らかくした肉に、小麦粉、卵、パン粉……おっとこれだとトンカツだ。小麦粉に卵入れて混ぜたどろどろの液体をつけて、油の中にどぼん。ちなみにこの油は退治した魔物肉から削いだラードっぽいやつ。たぶん食えるはず。
油で揚げれば、ほとんどの物は食えるさ。某国では下水から回収した油で揚げ物してた店もあったというし、死ななきゃ問題ない。死にかけたら、責任持って生き返らせるんで安心してくれ。
油はあっという間に溶けていく。真っ白に濁ってた塊が、熱を加えると透明に近くなるのは感動ものだ。見ていた調理担当の元奴隷や傭兵から拍手が起きた。
得意げに笑って、油に肉を投入する。っと、半端なく跳ねた! 温度が高いのか? よくわからん。母の手伝いをしておけば良かった。怖いので結界で蓋をする。しばらく見ていると肉が浮いてきた。結界で包んだ手でちょいっとひっくり返し、狐色になったら皿に移動させる。見ていた傭兵が真似しようとしたので、がうっと威嚇した。
「危ないっ! 真似しない!!」
「真似できない技術を使うな」
後ろから最もな指摘をして頭を叩いたのは、レイルだった。確かに教えてやれと言われたんだから、真似できるように箸を使うべきだったか。
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『彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ』というタイトルで、ヤンデレ系の溺愛ハッピーエンド新作を書き始めました。一緒にお楽しみください(=´∇`=)にゃん
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