348.なんだかんだ騒がしい(2)
「セイ、手伝いたい」
「野菜をこんな感じにしてくれる?」
唐揚げを乗せる大皿にサラダを盛るよう頼んだ。野菜と肉を別に盛ると野菜を残す。そのため野菜の上に肉を乗せ、同じ量ずつ取らないと違反にした。ちなみに罰則ありなので、みんな大人しく従っている。
「出来た!」
嬉しそうなリアは今日も可愛い。ピンクのブラウスに、赤いスカートだ。膝丈のスカートなんて、珍しいな。皇帝陛下が一緒に夕食を食べることに、最初は慄いていた子ども達も順応した。というか、緊張してる間にジャック達に食われちゃうしな。順応しないとおかず抜きになってしまう。
早朝訓練も板についてきて、紅白戦が出来るようになった。訓練に騎士が加わるようになり、気づいたら傭兵のはずが軍に組み込まれそうなんだが……その子らの雇い主はオレだぞ。
「やっぱり全員来たか」
予想通りの食堂の混雑具合に肩をすくめる。一部の騎士が慌ててリアに敬礼するが、シフェルに咎められて手を下ろした。この官舎にいる時は皇帝陛下として扱わないルールだ。普通に気軽に接して欲しいそうだ。可愛いからって言い寄ったら、次の日の朝が来ない覚悟が必要だけどね。
「手の空いてる奴から運ぶ! 食器も」
指示しながら、追加の唐揚げを用意する。あの人数じゃ足りない。食費が嵩むので、ウルスラに騎士団の予算を回してもらうことにした。ほぼ全員の騎士がここで食事をしてるので、異論も出ないし、出たら拳で黙らせる。
「いただきます」
恒例の挨拶も、気づいたら騎士や侍従達も覚えて使っていた。最近では貴族の間にも広まりつつあるとか。孤児院でも使ってるので、平民が覚えるのもすぐだろう。
食卓の足元で唐揚げなしの皿を恨めしそうに眺めるブラウ、気の毒に思ったマロンがひとつ分けてやり、スノーも迷った末にそっと転がした。がっつく彼らの様子を見ながら、マロンとスノーの器に唐揚げを補充する。主殿は甘いと言いたげなヒジリに苦笑いし、オレも食事を始めた。
「美味しい……あ、そうだった。ヴィヴィアンの婚約が決まるみたい」
シフェルから聞いた話を始めたリアの声に頷き、ブロンズの髪の宮廷魔術師を思い浮かべる。特殊な血筋だからこの国から出さないだろうと思っていたら、案の定国内で選んだ……いや、国内じゃないのか? でも今は国内だ。
「お相手は、ライアン殿だ」
「あのライアンと、ねぇ」
傭兵のライアンと両思いだという。結婚後は、シフェルが昔名乗ったランスエーレ男爵家を相続する。ライアンもこの国に定住する覚悟が決まったらしい。それに伴い、サシャも定住申請を出した。つい先日、宮殿の入り口でリアの専属侍女に名指しされ、公開告白されたのだ。現場に居合わせたが、なかなか美人さんだし、いい子だと思う。
残されたジャックとノア、彼らに現在浮いた話はない。顔に傷あったりするけど、いい男だぞ? ちらちら見ている女性騎士もいるので、そのうち誰かに落とされるかも。
「私達の結婚もあと少しだな」
そう、結婚式を先に挙げることになった。実はリアとの結婚が待ち遠しくて、誰かに取られないか不安なオレの呟きが原因だ。
――誰が結婚は成人してからって決めたんだよ。政略結婚で若くして嫁ぐこともあるだろ。
このぼやきから、リアと2人で協力して書物を漁った。皇族や貴族の決まり事を書いた書物を片っ端から読み、確認した結果……明文化されていなかったのだ。慣習で「結婚するなら成人してから」と言われてきただけで、何も根拠がなかった。結婚後にすぐ子を作ることが多い貴族の習わしが、そのまま伝わってきたに過ぎない。
今回は政略結婚ではないが、他の伴侶を得ることは事実上不可能だ。結婚してしまい、大人になるまで寝室を分けるという条件を突きつけた。シフェルやウルスラは渋い顔をしたが、最後は折れた。これから大急ぎで準備をして、1年後には式を挙げる。
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