201.敵の敵はやっぱり敵だった(2)
聖獣なのにマロンがやられたことも、ドラゴンが暴走して止める手がないことも、全部オレの作戦から端を発していた。ここは責任を取るべきだろう。
「ちょっと行ってくる」
ここで先のやり取りに戻るわけだ。この際丁度いいから、ある程度敵の勢力を削ごうと傍観する正規兵の皆さん、南の国出身の奴もいるので被害を食い止めようとする傭兵達。責任を取るため聖獣を総動員しようと考えるオレ……全員がバラバラだった。
「まず、オレは行く。聖獣も連れていく。正規兵は残ってていいよ、中央の国の思惑もあると思うから。傭兵は一時的に解雇……はまずいから、休暇を与える! 1日好きに過ごして。助けに行ってもいいし、見ててもいい。それじゃ解散!!」
ヒジリに跨って空を駆ける。空中で腕を組んで考える事、わずか数十秒――使える手は何でも使うと決めた。コウコとスノー、ブラウは戦力として使える。
「コウコ、スノー、ブラウはドラゴンを追い払って」
『殺すのではなくて?』
コウコが不思議そうに問い返す。彼女の言いたいことはわかるが、呼びつけたのはこっちだし。退治するのは可哀想だろ。それにマロンが巣穴から全部狩り出したとしたら、一家全滅になっちゃう。それは極悪非道すぎると説明した。
『主のそういう甘いとこ、意外と嫌いじゃない』
ブラウ、どっかの乙女ゲーのツンデレのセリフか? 回りくどくてわかりづらい上に、褒められた感がない。肩を竦めてもう一度同じ命令を下した。
「追い払って」
素直に従ってくれた彼らが、ドラゴンを上手に王都の外へ押し出す。翼に強風を当てて吹き飛ばしたり、炎で軽く炙って外へ押し出した。氷の小さな粒を叩きつけるチビドラゴンは、間違えて撃たれないように周囲に氷の壁を作る。2~3発弾いてたから、氷の壁は大活躍だった。
外から見ると、攻撃してきたドラゴンもスノーも同じ蜥蜴類だし? 気を付けるよう言い含めたら「僕は主様に愛されてる」と勘違いして、空中で踊ってたが……まあ問題ないだろう。
「キヨ~!!」
大声で呼ぶジャックに気づき、ヒジリと下に戻る。
「俺らは王城制圧してくるから、あと任せる」
「はぁ……?」
それってオレが指揮しなくていいのか? と思ったら、すでにジークムンド班が侵入していた。混乱した状況なら簡単に王城を占拠できる上、正規軍より個々の能力が高い傭兵の方が向いているのだと。説明されて頷くオレに、クリスティーンが苦笑いした。
「私たちはあまり役に立ってないな」
「あ、それならお願いがあるんだけど。街の人たちを誘導して、ケガ人の手当てをしてくれる?」
「……なぜだ?」
「占領した直後は何か奪われるんじゃないかって疑心暗鬼になるでしょ? だから優しくして懐柔するのさ」
「懐柔してどうするのよ」
「占領しやすくなるじゃんか」
「「「……やっぱキヨだな」」」
何、その評価。絶句したクリスティーンも目を見開いて驚きを露わにする。そんなに変なこと言ったかな?
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