266.根回しと策略に溺れる(2)
明日の裁判の前に会いたいとリアムに申し出たら、なぜかシフェルに襟を摘まれて運ばれた。薄暗い部屋の隅で壁際に追いやられる。苦笑いするじいやが部屋の入り口で見張りを買って出た。いや、そこはオレを助ける場面だろ!
「キヨ、陛下に余計なことを言わないでくださいね。あの方は普段優秀ですが、あなたの事になるとあれこれ顔に出ます」
にへらっと顔が崩れるのがわかった。普段優秀で立派な陛下が、オレの事になると可愛いリアムになる――頭の中で変換された言葉に頬は緩みっ放しだ。
「顔に出たら危険なのは、陛下ですよ」
「そこは任せてくれ。護衛にコウコを派遣する」
きっちり貞操は守ります。余計な発言する奴からも、聖獣様がお守りしますとも。聖獣は最強のジョーカーです。聖獣をつけると聞いたら、シフェルが黙り込んだ。
珍しいブロンズ色の髪を、部屋の薄明かりがぼんやり浮かび上がらせる。この髪色は夜の戦いに向かないな。多分、オレの白っぽい金髪も目立つはずだ。そんなことを考えていると、作戦でも決まったのか、シフェルが条件を提示した。
「赤の聖獣殿に、足元の影に潜んでもらうことは可能ですか?」
「出来るよ」
基本的にはオレの影を利用してるように見えるが、前にヒジリは別の人の影からも出入りした。それにオレの影からしか出入り出来なかったら、影の向こう側で出口がなくなってしまう。オレの影に入って、向こうで狩りをした時に木か何かの影を利用したはずなのだ。
簡単に説明すると、納得したようだった。リアムの肩あたりに見える形で絡まってもらおうと思っていたのに、それをシフェルは変更させる。また囮に使うなら、これは一言がつんと言ってやらねば!
「リアムを、囮に使うの?」
腕を組んで拒絶の姿勢を見せたオレに、シフェルは首を横に振った。その表情は多少の疲れと、諦めに似た感情を含んでいる。じっと見つめたオレに、シフェルは近くにあった椅子を勧めた。素直に移動したオレの向かいに腰掛け、シフェルは重い口を開く。
「陛下は自覚がありませんが、最近……所作やお言葉に女性らしさが滲んでいます。キヨに恋をしたことが影響しているでしょう。今回、オタラ公爵やトゥーリ公爵が動いた原因も、そこにあると思われます」
あちゃーと額を押さえる。なるほど、突然バレた原因は何かと思ったけど、オレへの恋心が言動に出ちゃったのか。よく恋をすると美しくなると言うけど、それが実際に作用したのかも。
え? オレ、そんなに愛されてるの!? 愛されたいけど、本当に……いいのかな。突然不安が襲った。
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