72.聖獣いたら、オレは必要なくね?(3)
じろじろ人を見たり指差すのは失礼だ。知ってるけど、指差した挙句じろじろ見てしまった。王太子がなんで戦場にいるんだ? 普通は安全な場所でふんぞり返ってる立場だろう。
ノアがお茶を差し出すので、指差していた右手で受け取った。ぐいっと飲んだら麦茶である。冷たさが足りなくて温いが、一気に飲み干した。
「ありがとう、ノア」
「お代わりしておけ」
オカン機能全開のノアにもういっぱい渡され、見守る周囲の視線を浴びながら口をつける。戦場だった平原は異常な光景が広がっていた。絞め落とされた巨大青猫が転がり、その左側に大量の捕虜……右側は駆け寄る傭兵達がいて、後ろに賭けの精算をする不届き者がいる。
「レイル、賭けに勝ったんなら何かくれ」
「がめついな」
「お前に言われたくない」
お茶のお代わりをしている間に、オレの現実逃避が始まる。だって、目の前に北の国の次の王様がいるとかおかしいでしょ。こっちの世界は偉い人が前線に立つ習慣でもあるの? いや、リアムが国に残ってるからそれはない。
自答自問しながらお茶を飲んだ。
「よう、ボス! 頼んだ分の借りは返したぞ」
にやりと強面を歪めて笑うジークムンドのご機嫌な態度に、王太子を見つけて捕まえたのは彼だと知る。頼んだ分の借りってのは、コウコが運んだ若い傭兵のことだろう。
カップをノアに返して、すたすたと近づいてジークムンドを手招きした。屈辱だが、今の小さな身体で彼の耳元に届かないのだ。身を屈めたジークムンドに「あとで魔力なしの傭兵が今までどうしてたか教えてくれ」と告げた。驚いた顔でオレを見たあと「どうしてだ?」と聞き返された。
「決まってるだろ、今後の対策用だ。ジークの部下ならオレだって大切にするさ。何がダメで何が出来るか、確認しておかないと戦場でまた困るだろうが」
オレとジークムンドのひそひそ話の最後は、普通の音量で告げた。すると聞き耳を立てていたレイルが、口笛を吹いた。温い風が吹いて、しっとりかいた汗をなでる。
「なんだよ、レイル」
「いや……捕まえた王子様放置して、うちの王子様は好き勝手に生きてるなと思ったわけだ。しかも見捨てない選択肢は、非道な作戦を実行するお前らしくない」
言われる内容は至極ごもっともだった。
しかし言わせてもらえば、オレにとって大切なのは敵国の王子様とやらじゃなく、仲間なわけだ。その仲間が大切にしている部下なら、オレも大切にしてやりたいと思う。その過程で、王太子を後回しにしただけだった。非道な作戦と仲間の保護は別の話だろう。
「オレらしくない? そんなこと言えるほど親しくないだろ」
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